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診療圏調査のデータは、いつ調べたものか

クリニックの開業地を検討するとき、多くの方が診療圏調査のデータをご覧になります。人口、年齢構成、競合の分布。判断の土台になる大事な資料です。ただ、そのデータがいつ調査されたものかは、意外と確認されていません。

データの調査時点と、今の街がずれることがあります

埼玉県東松山市の高坂で小児科の開業をお手伝いしたとき、まさにこれが起きました。その土地は区画整理を終えて街が新しくなり、若い世帯が増えていました。ところが取り寄せた商圏データは区画整理より前に調査されたもので、そこはまだ田んぼでした。

データだけを見れば、誰がどう判断しても「ここに出店しても利がない」という結論になります。実際、そう見えていたはずです。

そこで当社は、データではなく今そこにいる子どもの数を調べました。近隣の幼稚園・保育園・小学校に通う子どもの人数を、一つずつ確認していく方法です。その結果、小児科として十分に成り立つ市場があることを確かめられました。

公表されている数字で確かめられます

このときの見立てが正しかったかどうかは、東松山市が公表している数字で誰でも確認できます。まず、小学校の児童数です。

東松山市の市立小学校11校の児童数(令和8年5月1日現在)
高坂789
市の川492
新明463
桜山446
新宿375
青鳥373
野本363
松山第一343
松山第二289
唐子259
大岡79

高坂小学校は市内で最も児童数が多く、2位の市の川小学校の約1.6倍です。令和3年度から令和7年度は811人→806→805→822→823人と増え、令和8年度に789人となりました。
出典:東松山市「令和9年度以降 市立小・中学校 児童・生徒数及び学級数の推移・推計」

次に、就学前の子どもがどれだけいるかです。近隣の保育・幼児教育施設の定員は次のとおりです。

施設(所在地) 定員
高坂ひまわり保育園
(高坂3-11-8)
132人
認定こども園高坂幼稚園
(高坂3-13-2)
234人
幼稚園部分164人+保育所機能部分70人
たかさか保育園
(高坂1122)
90人
合計 456人
うち高坂三丁目内に366人

出典:東松山市「保育施設一覧」。定員であって在籍数ではありません。

そして、この街に「高坂一丁目」から「高坂七丁目」という住所表示ができたのは2024年11月9日です。それ以前は大字高坂・大字正代・大字毛塚・大字宮鼻でした。区画整理で新しく区切り直した土地を、正式にそれぞれの所有者のものとして確定させる手続き(換地処分)が終わったことに伴う住所変更です。

整理すると、こうなります。市内で最も児童数の多い小学校の学区で、同じ丁目のなかに定員366人分の保育園と認定こども園があり、住所表示ができたのは2024年11月。それでも、古い区域名で集計されたデータの上では田んぼのままでした。

減る見通しも、あわせてご覧ください

正直に申し上げると、高坂小学校の児童数は今後減少する推計です。市が公表している推計は次のとおりです。

高坂小学校の児童数の推計(東松山市公表)
令和8789
令和9733
令和10695
令和11654
令和12595
令和13553
令和14521

6年で268人減る見通しです。それでも令和14年度の521人で市内最多の見込みです(2位の予測は新明437人、市の川435人)。

これは東松山市全体の傾向で、高坂だけの話ではありません。開業の判断材料としては、増えている事実と減る見通しの両方をご覧いただくべきだと考えています。

不利に見えるデータは、競合も見ています

ここからが大事なところです。そういうデータしか出てこない立地だったからこそ、競合が来ませんでした。数字の上で不利に見える場所は、他社も同じように避けます。結果として、競争のない状態で開業することができました。

データを疑ってかかるべきだ、と申し上げたいのではありません。データの調査時点と、今の街の姿が合っているかを確かめる。それだけで、他の人が見落としている土地が候補に入ってくることがあります。

ご自身で確かめる手順

特別な資料は要りません。次の順に確認すれば、どの地域でも同じことができます。

  1. 調査時点を聞く。診療圏調査の資料を受け取ったら、元になった統計がいつのものかを提供元に確認します。
  2. 区画整理や大規模開発の履歴を調べる。自治体のサイトに、事業の施行期間と換地処分(区切り直した土地を確定させる手続き)の日が載っています。住所表示が変わった地域は、その日付が決め手になります。
  3. 学校の児童・生徒数を見る。多くの自治体が学校ごとの人数と将来推計をPDFで公表しています。「〈市名〉 児童生徒数 推計」で見つかります。
  4. 保育施設の定員を見る。就学前の人数の目安になります。自治体の「保育施設一覧」に載っています。

いずれも公表資料ですので、ご自身で確認していただけます。候補地が絞れてきた段階では、当社でまとめてお調べします。

よくあるご質問

商圏調査のデータは信用できないということですか。

そうではありません。判断の土台として必要な資料です。ただしいつ調査されたものかは必ず確認してください。区画整理や大規模開発があった地域では、データが街の現在の姿に追いついていないことがあります。

子どもの数を調べる方法は、小児科以外でも使えますか。

診療科によって見るべき数字が変わります。子どもの数が目安になるのは小児科や産科などで、内科や整形外科であれば年齢別人口や高齢化率のほうが手がかりになります。共通しているのは、統計の調査時点と今の街の姿が合っているかを確かめる、という手順のほうです。

検討している地域が東松山市ではないのですが、同じ調べ方はできますか。

できます。学校ごとの児童・生徒数と将来推計、保育施設の一覧、区画整理事業の履歴は、多くの自治体が同じようにサイトで公表しています。区画整理や大規模開発があった地域ほど、この確認が効きます。

商圏の見立てがついたあとの、土地に建てられるかどうかの話は診療所・病院と用途地域にまとめています。開業用地全体のご案内はクリニック・調剤薬局の開業用地をご覧ください。

その他のテーマは不動産コラムにまとめています。

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