クリニックの開業地を探すとき、「ここは住宅街だから無理だろう」と最初から外している土地はありませんか。何を確かめればよいか、法令の根拠と併せてご説明します。
このページのポイント
- 20床以上なら病院となり、建てられる用途地域が限られます
- 薬局は「店舗」の扱いで、用途地域と床面積で可否が決まります
- 用途地域の他に、地区計画や建築協定なども重なることがあります
このページの内容
建築基準法の別表第二に「診療所」が書かれています
診療所は、住居系でもっとも規制の厳しい第一種低層住居専用地域に建てられます。建築基準法の別表第二(い)項の第8号に「診療所」が明記されているためです。
第一種低層住居専用地域は、店舗も事務所も原則として建てられない、閑静な住宅街のための区分です。そこに診療所が並んで書かれている、ということです。
出典:建築基準法 別表第二(い)項(第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物)
条件が合えば、有力な候補になります
住宅地のなかの、静かで、患者さんが通いやすい場所です。商業地より土地の価格が抑えられることも多くあります。
病院と診療所は、20床で分かれます
医療法の第1条の5で、20人以上の患者を入院させる施設を持つものが「病院」、無床または19床以下が「診療所」と定められています。
※帯の長さは、床数に比例しません。
用途地域の制限は、この区別で変わります。19床以下であれば有床でも診療所ですので、第一種低層住居専用地域に建てられます。
出典:医療法 第1条の5
| 用途地域 | 診療所 19床以下 |
病院 20床以上 |
薬局 店舗として |
|---|---|---|---|
| 第一種低層住居専用 | ○ | × | ×※1 |
| 第二種低層住居専用 | ○ | × | △150㎡以下※2 |
| 田園住居 | ○ | × | △150㎡以下※2 |
| 第一種中高層住居専用 | ○ | ○ | △500㎡以下 |
| 第二種中高層住居専用 | ○ | ○ | △1,500㎡以下 |
| 第一種住居 | ○ | ○ | △3,000㎡以下 |
| 第二種住居 | ○ | ○ | ○ |
| 準住居 | ○ | ○ | ○ |
| 近隣商業 | ○ | ○ | ○ |
| 商業 | ○ | ○ | ○ |
| 準工業 | ○ | ○ | ○ |
| 工業 | ○ | × | ○ |
| 工業専用 | ○ | × | × |
○ 建てられる/△ 床面積の上限あり/× 建てられない
※1 住宅との兼用(延べ面積の半分以下・50㎡以下)なら可
※2 日用品販売店舗と扱われる場合
※実際の可否は、建ぺい率・容積率、地区計画、建築協定と合わせて自治体の窓口でご確認ください。
出典:建築基準法 別表第二/国土交通省「用途地域による建築物の用途制限の概要」
薬局は、診療所と同じ扱いではありません
薬局は用途上「店舗」として扱われ、用途地域と床面積の組み合わせで可否が決まります。例えば第二種低層住居専用地域では、店舗の床面積は150㎡以内(日用品販売店舗と扱われる場合)という制限があります。
薬局で、合わせて確かめる点
薬局は「店舗」として扱われ、階数の制限(2階以下など)が重なる区分もあります。低層住居系で薬局を「日用品販売店舗」とみるかどうかは自治体(特定行政庁)で判断が分かれ、調剤専門の薬局は特に確認が必要です。
つまり診療所は建てられるが、薬局は建てられない、という土地があり得ます。クリニック単独で計画するのか、薬局まで含めて計画するのかで、選べる土地が変わるということです。

もう一つの規制
なお調剤薬局には、用途地域とは別に「医療機関と一体的な構造にできない」という規制もあります。こちらは建物の配置に直結しますので、調剤薬局の一体的構造の規制にまとめました。
用途地域だけでは決まりません
| 地区計画 | 建物の用途・高さ・壁面の位置などを、その地区独自に定めたもの。用途地域より厳しい条件が入っていることがあります |
|---|---|
| 建築協定 | 土地所有者どうしの取り決め。行政の制限とは別に効きます |
| 建ぺい率・容積率 | 建てられる面積と延べ床面積の上限。診療科によって必要な広さが違うため、ここで計画が変わることがあります |
| 接道の状況 | 前面道路の幅と、敷地がどれだけ接しているか。駐車場の出入口の取り方にも関わります |
| 駐車場 | 自治体の条例で必要台数が定められている場合があります |
商圏を調べるのと同時に、土地の制約も確かめておくのが確実です
設計に入ってから「想定の規模が建たない」と分かると、費やした時間が戻ってきません。
ご自身で調べる手順
用途地域ごとの可否は、建物の種類と規模の組み合わせで細かく決まります。当社では候補地ごとに調べてご報告します。
よくあるご質問
本当に第一種低層住居専用地域にクリニックを建てられるのですか。
建てられます。建築基準法の別表第二(い)項の第8号に「診療所」が挙げられています。ただし建ぺい率・容積率・高さの制限は厳しい区分ですので、計画している規模が収まるかは別に確認が必要です。また地区計画や建築協定が重なっている場合は、そちらの条件も見る必要があります。
用途地域は自分で調べられますか。
調べられます。自治体の都市計画課の窓口や、自治体が公開している都市計画図で確認できます。ただし用途地域だけでなく地区計画や建築協定が重なっている場合があり、それぞれ条件が異なります。候補地が絞れてきた段階では、当社でまとめてお調べします。
有床のクリニックを考えていますが、土地の選び方は変わりますか。
19床以下であれば診療所ですので、用途地域の扱いは無床のクリニックと同じです。20床以上を計画される場合は病院となり、建てられる用途地域が限られますので、土地選びの段階から条件が変わります。まず何床で計画するかを決めていただくと、候補地の絞り込みが早くなります。
当社が扱っている開業用地の例として、東松山市高坂のクリニック開業用地をご覧いただけます。第一種住居地域の土地です。隣の土地では、2026年3月に小児科と調剤薬局が開業しています。
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。