クリニックの近くに調剤薬局を、と考える場合、不動産の計画段階で知っておくべき規制があります。建物ができてから分かると、動かしようがない種類の話です。
一体的な構造にはできません
保険薬局は、保険医療機関と一体的な構造であってはならないと定められています(保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 第2条の3)。認められない形として、次のようなものが挙げられています。
専用通路でつながっている
医院と薬局を通路で結び、公道に出ずに行き来できる形。
建物の中で行き来できる
医院の建物の中にあり、内側の扉でつながっている形。医院の調剤所と変わりません。
薬局の出入口が公道から見えない
敷地の奥にあり、駐車場を通って裏口から入る形。医院の休診日に薬局へ行けなくなる形も同じです。
それぞれの出入口が公道に面している
一度おもてに出て、公道を通って薬局に入る形。同じ敷地でも、同じ建物でも、認められる場合があります。
出典:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 第2条の3/厚生労働省 保医発0305第15号(令和6年3月5日)の「一体的な構造」の解釈
言い換えると、患者さんが一度おもてに出て、公道を通って薬局に入るという形になっている必要がある、ということです。同じ敷地に建てること自体が禁じられているわけではありません。問題になるのは、行き来のしかたと出入口の位置です。
出典:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 第2条の3/内閣府 規制改革推進会議 医療・介護ワーキング・グループ「薬局の構造規制」(平成28年11月15日)
フェンスを一律に求める運用は見直されました
かつては、医療機関と薬局のあいだに公道等を介することを一律に求める運用がありました(そのためにフェンスを設ける例が知られています)。この取り扱いは2016年10月に見直され、同じ敷地内の配置も認められるようになりました。ただし専用通路でつなぐ形と、建物の中で直接行き来できる形は、引き続き認められません。医療機関の建物の中に置く場合は、薬局に外への出入口が別にあることが最低限の条件です。
認められるかどうかは事例ごとの個別判断です。「こうしておけば必ず通る」という基準があるわけではありません。同じような配置でも、道路の状況や出入口の見え方によって判断が変わり得ます。
これは、土地の形と建物配置の話でもあります
ここが不動産の話につながります。薬局は保険薬局の指定を受けてはじめて健康保険の処方箋を扱えますが、その指定が下りるかどうかに建物の配置や出入口の取り方が直結します。これは薬局の話であると同時に、土地の形と建物配置の話です。
配置が成立するかどうかは、次の4つで分かれます。
1
敷地の間口
医院と薬局、それぞれの出入口を公道側に取れる幅があるか
2
道路との接し方
一方向だけか、角地か。角地なら二面を使えます
3
駐車場の取り方
駐車場を通って行き来する形が「専用通路」と見られないか
4
敷地の広さ
2棟を離して置き、それぞれに駐車場を取れるか
土地を決めてから薬局の話を始めると、「この敷地形状では並べられない」と後から分かることがあります。土地の候補を絞る段階で薬局まで含めて見ておくのは、この順番を逆にしないためです。
設計に入る前に確認してください
個別判断である以上、確実なのは事前に聞いておくことです。保険薬局の指定を扱うのは地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局。関東甲信越であれば関東信越厚生局です)で、その事務所が窓口になります。設計に入る前に、配置の考え方を確認しておくことをお勧めします。図面ができてから相談すると、修正の手戻りが大きくなります。
当社では、土地の候補段階で「この敷地なら薬局を並べられるか」の見通しをお伝えしたうえで、最終的な確認は地方厚生局と設計者を交えて進めていただく形をとっています。
よくあるご質問
クリニックと調剤薬局を同時に探してもらえますか。
承ります。埼玉県東松山市の案件では、クリニックの開業に合わせて同じ敷地で開業いただける調剤薬局をお探ししました。ただし保険薬局には医療機関と一体的な構造にできないという規制があるため、建物の配置を含めた検討が必要です。
同じ敷地に建てること自体が禁止されているのですか。
禁止されているのは一体的な構造です。同じ敷地であっても、患者さんが公道を介して行き来する形になっていて、薬局の出入口が公道から確認できるのであれば、認められる場合があります。ただし個別判断ですので、配置が固まる前に地方厚生局にご確認ください。
先にクリニックを建てて、あとから薬局を考えることはできますか。
できますが、選択肢は狭くなります。クリニックの配置と駐車場の取り方が決まったあとでは、薬局を置ける場所と出入口の取り方が限られるためです。薬局まで含める可能性があるなら、土地を決める段階で一緒に検討しておくほうが確実です。
土地に何が建てられるかの話は診療所・病院と用途地域に、開業地の商圏をどう確かめるかは診療圏調査のデータは、いつ調べたものかにまとめています。開業用地全体のご案内はクリニック・調剤薬局の開業用地をご覧ください。
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