知的障害のあるお子さんがいるご家庭では、財産をどう残すかと同じくらい、残したあと誰が管理するかが問題になります。後見人を複数選ぶ仕組みを中心に、公的な資料にあたって整理しました。
このページのポイント
- お子さんを代理する人が決まるまで、遺産分割は進みません
- 後見人が複数でも、共同か分担かの定めが無ければ各自が単独で動かせます
- 2026年の法改正後も、後見人を複数立てて備える考え方は使えます(施行日は未定)
このページの内容
親が亡くなったあと、手続きをする人が必要になります
財産の全部の分け方を遺言で決めてあれば、協議は要りません(知的障害のある子に財産を残すとき)。それでも、預金をおろす、名義を変えるといった手続きをする人は別に必要です。
親が後見人になることもできます。ただ、親も相続人なら利害がぶつかり、遺産分割で子を代理できません。代わりに、家庭裁判所に特別代理人を選んでもらいます(民法860条、826条)。後見監督人がついていれば、その監督人が子を代理します(民法851条4号)。後見は長く続き、お子さんが若いほど何十年にもなります。親がいなくなれば、次の人が必要です。
後見人になるのは、親族とは限りません。令和7年に選ばれた成年後見人等は、親族7,014件(16.4%)、親族以外35,718件(83.6%)でした。
※「社協」は社会福祉協議会、「その他」は社会保険労務士214件・精神保健福祉士79件・その他個人60件・税理士43件の合計。開始と同時に選ばれた数で、開始後の選任は含みません。
出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月〜12月―」(令和8年3月)
後見人による不正は、実際に起きています
最高裁判所は、不正事例の件数と被害額を毎年公表しています。令和7年(2025年)の被害額は約7億9千万円でした。下の178件のうち、弁護士や司法書士などの士業(資料では「専門職」)によるものは26件・約1億6千万円で、残りは士業以外です。
178件
不正事例
令和7年
259,901人
利用者
令和7年12月末日
割合としては大きくありません。ただ、お子さんの後見は何十年も続きます。長い期間、一人の人に財産を預けきりにしてよいか。そこは考えておいたほうがよい、というのがこのページの趣旨です。
出典:最高裁判所事務総局家庭局「後見人等による不正事例」(実情調査)。この数値は、その年の1月から12月までに、家庭裁判所が一連の対応を終えたものとして報告したものです。不正そのものが起きた年ではありません。利用者数は前掲・成年後見関係事件の概況によります。
一人に任せきりにしない、3つの方法
後見人が一人だけで財産を動かせる状態にしない。そのための仕組みが3つあります。いずれも決めるのは家庭裁判所ですが、申立てのときに希望を伝えることはできます。
1. 後見人を複数選ぶ
家庭裁判所は、必要と認めるときは、後見人をさらに選ぶことができます(民法843条3項)。複数のとき、共同か事務の分担かを、家庭裁判所は職権で定めることができるとされています(民法859条の2)。必ず定めるわけではありません。
定めがないとき
各自が単独で権限を行使できます
事務を分けると定めたとき
お金は司法書士や弁護士の先生、暮らしや施設は親族のように分け、財産に手が届く人と暮らしを見る人を別にします
共同で行うと定めたとき
財産を動かすのに二人の関与が要ります。遅くはなりますが、一人の判断ではお金が動きません

ですから複数を希望するときは、共同か、事務を分けるかまで伝えます。
複数選任は、めずらしい話ではありません。令和7年に認容で終局した(家庭裁判所が認めて終わった)後見・保佐・補助の事件は39,860件、選ばれた後見人等を関係別に数えると42,732件です。差は、1件に複数いると複数の「関係別」に当たることがあるため、と最高裁は注記しています(前掲・成年後見関係事件の概況)。
2. 後見監督人をつける
後見監督人は後見人の事務を監督する人で、家庭裁判所が必要と認めるときに選ぶことができます(民法849条)。後見人と本人の利害がぶつかる場面では、監督人が本人を代理します(民法851条4号)。
同じ令和7年の39,860件のうち、監督人等が開始と同時に選ばれたのは1,375件、約3.4%でした(開始後の選任は含みません。前掲の概況)。
3. 後見制度支援信託・後見制度支援預貯金を使う
日常の支払いに必要な分だけを後見人が手元で管理し、通常使わないお金は信託銀行等に信託するか、指定の預貯金に預ける仕組みです。引き出しや解約には、家庭裁判所が発行する指示書が必要です。

| 区分 | 支援信託 | 支援預貯金 |
|---|---|---|
| 成年後見 | ○ | ○ |
| 未成年後見 | ○※ | ○※ |
| 保佐 | × | △ |
| 補助 | × | △ |
| 新規 | 615人 | 2,005人 |
| 累計 | 31,234人 | 13,511人 |
※未成年後見で使えるかどうかなど、細かい条件は金融機関の商品によって違います。
※△:保佐と補助は、一部の金融機関で令和7年10月から使えます。支援信託は、任意後見でも使えません。
※新規は令和7年の1年間、累計は平成24年2月から(支援預貯金は平成30年1月以降の集計)。
出典:最高裁判所事務総局家庭局「後見制度支援信託等の利用状況等について ―令和7年1月〜12月―」
費用はどうなるか
報酬は、後見人の申立てを受けて、家庭裁判所が審判(裁判所の決定)で決めます。額の決まりは法律になく、事案ごとの判断です(民法862条)。
後見人が複数のときも、それぞれの事務の内容に応じて決まります。複数にしたときの合計の目安は、東京家庭裁判所のいまの資料には載っていません。後見監督人が選ばれると、その報酬も別に決まります(民法852条)。
東京家庭裁判所では、後見人は原則として年に1回、仕事の報告をします。報酬の申立ても報告に合わせるので、後見が続くあいだ、原則として1年分ずつ決まります。
遺産分割などをした後見人は、報酬の上乗せを求めることができます
次のような手続きを、報酬の申立ての書類に書いて考慮を求めます。
- 遺産分割協議
- 不動産の売却・処分
- 施設の入所・変更・退所
- 障害福祉サービスの申請・契約・内容変更
ただし、認められるとは限りません。
最高裁判所は、全国で実際に決まった額を集計しています。本人の流動資産(現金・預貯金・有価証券)の額ごとの数字です。
20万円台
流動資産
1,000万円未満
この額が
7〜8割
30万円台
流動資産
1,000万円以上
5,000万円未満
この額が
5割あまり
60万円台
流動資産
5,000万円以上
1億円未満
この額が
約5割
70万円台
流動資産
1億円以上
この額が
4割あまり
※割合は、資料の表では順に73.9〜80.6%(3つの区分をまとめた幅)、54.0%、50.3%、43.0%です。流動資産が多いほど、いちばん多い額も高くなります。
※令和7年4月1日以降に申し立てられ、同年7月〜12月に認められた事件です。後見人が複数の事件や、期間が12か月でない事件も含みます。流動資産に、後見制度支援信託・支援預貯金の分は含みません。
同じ条件で、監督人(親族以外)は、流動資産が5,000万円未満なら「10万円台」が6〜7割でした。
出典:最高裁判所事務総局家庭局「報酬に関する実情調査の集計結果について ―令和7年7月〜12月―」(資料3・資料13)。東京家庭裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)」と、同ページの「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」(令和7年4月)・「【報酬付与申立て】印紙・郵便切手・添付資料について」。同ページは、報酬額のめやすとしてこの集計を案内しています。裁判所「報酬付与の申立て(成年後見制度、未成年後見制度)」の報酬付与申立事情説明書。
正直に申し上げると、後見人を決めるのは家庭裁判所です
候補者を書いても、そのとおりに選ばれるとは限りません。分け方の希望は、弁護士や司法書士の先生と相談しながら、理由をそえて申立ての段階で伝えます。
2026年の法改正で、制度が変わります
令和8年6月17日
見直しの法律が成立
6月24日
公布(民法等の一部を改正する法律・令和8年法律第45号)
施行日(未定)
公布の日から2年6か月を超えない範囲で、政令で定める日
いま
後見・保佐・補助の3つ
判断能力の程度で、使える制度が決まっています。
改正後
後見と保佐を廃止し、補助に一元化
本人に必要な行為ごとに権限を与え、必要がなくなれば終了もできます。
判断が難しい状態が続くお子さんにも、受け皿は残ります。事理弁識能力を欠く常況(判断する力を欠く状態が続くこと)と認められれば、法律で定める重要な財産行為をまとめて取り消せる「特定補助」を選べるとされています。
既に後見や保佐を使っている方は、基本的にそのまま続けられます。ただし、解任の事由と、本人の意向を把握する義務には、改正後の民法が適用されます。新しい制度に移るには補助の申立てをし直し、いまの後見・保佐開始の審判は取り消されます(附則2条・3条)。
後見人を複数立てて備える考え方は、改正後も使えます
- 補助人を追加で選べること
(改正後の民法876条の2第3項) - 複数いるときに、共同するか事務を分けるかを家庭裁判所が定めること(同876条の12)
なお、後見制度支援信託の対象は現在「成年後見と未成年後見」です。後見の制度が廃止されたあとの扱いは、今後の運用で定まります。
出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」。同資料によれば、令和7年12月末日時点の利用者数は、後見180,828人、保佐58,162人、補助18,078人です。任意後見2,833人を加えた合計が259,901人になります。
よくあるご質問
親が後見人になることはできますか。
できます。ただし、親も相続人である遺産分割では、親と子の利害がぶつかります。そのため、親が後見人として子を代理することはできません。家庭裁判所に特別代理人を選んでもらうことになります。後見監督人がついている場合は、その監督人が子を代理します。また、後見は何十年も続きます。親が後見人になった場合、その親が高齢になったあとをどうするかは、別に考えておく必要があります。
後見人を複数にしてほしい、と希望できますか。
申立てのときに候補者を書き、希望を伝えることはできます。ただし、決めるのは家庭裁判所です。希望どおりに選ばれるとは限りません。なぜ複数にしたいのか、どう事務を分けたいのかを、理由と合わせて伝えることになります。申立ての書き方は弁護士や司法書士の先生にご相談ください。
後見人には、ずっと報酬を払い続けるのですか。
まず押さえておきたいのは、報酬はお子さん自身の財産のなかから支払われるという点です(民法862条)。後見人から報酬付与の申立てがあったときに、家庭裁判所が審判で決めます。金額は事案ごとの判断です。東京家庭裁判所では、後見人が申し立てる場合、年に1回の報告に合わせるので、原則として1年ごとに決まります。実際に決まった額は、最高裁判所が集計しています(令和7年7月〜12月)。親族以外の後見人の報酬(1回分)は、流動資産(現金・預貯金など)が1,000万円未満なら「20万円台」がいちばん多い額です。流動資産が多いほど高くなる傾向です。親族が後見人の場合は、そもそも申立てをしないことが多いとされています。後見が何十年も続くことを考えると、総額でどのくらいになるかは見ておいたほうがよい項目です。
申し立ててから決まるまで、どのくらいかかりますか。
令和7年の実績では、2か月以内に終わったものが約71.1%、4か月以内が約93.8%でした(前掲・成年後見関係事件の概況)。ただし、遺産分割はお子さんを代理する人が決まるまで進められません。亡くなってから動き出すと、その分だけ全体が遅れます。
遺言や信託、自宅や土地の扱いは知的障害のある子に財産を残すときにまとめました。
相続税や名義変更も、まとめて相談したい方へ
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