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知的障害のある子に財産を残すとき

知的障害のあるお子さんに財産を残すとき、考えることは「いくら残すか」だけではありません。残したものを誰がどう管理し、分けにくい不動産をどうするか。親が元気なうちに決めておけることを、公的な資料をもとに、現行法にもとづいて整理しました。

このページのポイント

  • 遺言で全部の分け方を決めれば協議は不要。ただし管理する人は別に必要です
  • お子さんの住まいを後見人が売るには、家庭裁判所の許可が要ります
  • 相続税の障害者控除は、85歳までの1年につき10万円(特別障害者は20万円)

遺言で決められること、決められないこと

遺言でできること、できないこと
遺言で決められる
  • 財産の全部の分け方
  • 決めておけば、遺産分割協議が要らない
  • 親が後見人を兼ねる場合の、特別代理人の選任も要らなくなる
遺言では決められない
  • 本人に代わって手続きをする人(預金をおろす、施設の費用を払う、名義を書き換える)
  • 遺留分(兄弟姉妹以外の相続人に、法律で保障された最低限の取り分。民法1042条)

※親が後見人を兼ねると遺産分割で親子の利害がぶつかるため、家庭裁判所に特別代理人を選んでもらいます(後見監督人がいれば監督人が代理)。

遺言は、成年後見の代わりにはなりません

受け取った財産を管理する人は、やはり別に必要です。その役目を誰が担うのかは、後見人を複数立てる選び方も含めて知的障害のある子の相続と後見人にまとめました。

遺言でお子さんに多く寄せればごきょうだいの遺留分を侵し、減らせばお子さんの遺留分が侵されます。その請求にはやはり代理する人が要り、どちらに振っても後見の話に戻ってきます。

令和8年(2026年)の法改正で、遺言の作り方も変わります。押印の任意化は公布から1年以内で、成年後見の見直しより先に始まります。パソコンなどで作った遺言を法務局が保管する方式(保管証書遺言)は、公布から3年以内に始まります。施行日は、いずれも政令で定める日です。

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」

自宅や土地があるとき

財産に不動産が含まれると、止まりやすいところが3つあります。

1. 分け方が決まるまで、売主が決まりません

判断が難しい相続人がいると、代理する人が決まるまで止まります
  1. 1代理する人が決まる
  2. 2分け方が決まるここで売主が決まります
  3. 3売りに出す
  4. 4決済この日までに名義を相続人へ(相続登記)

相続登記には期限もあります。手順は三鷹市の空き家・相続した家の売却にまとめました。

2. お子さんの住まいを売るには、家庭裁判所の許可が要ります

住まいは、後見人が「売ったほうがよい」と考えても、それだけでは売れません

後見人が処分するのは、お子さんの住まい(居住用の建物やその敷地)ですか

いいえこの許可は要りません

はい

家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)処分には、売却の他賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定なども含みます

※後見監督人がついていれば、住まいかどうかにかかわらず、不動産の処分に監督人の同意が要ります(民法864条、13条1項3号)。

後見人がお子さんの住まいを売るには、家庭裁判所の許可が要ることを描いた絵。

「もう住んでいないから許可は要らない」とは限りません

施設に入っているなど、いま住んでいなくても、生活の本拠だった建物は対象になることがあります。

3. 共有にすると、動かしにくくなります

よかれと思って持分を分けた結果、長く動かせない財産になることがあります

不動産全体を売るとき

ごきょうだいなど共有者全員の同意が必要とされています。一人に後見人がいれば後見人が関わり、居住用なら家庭裁判所の許可も要ります

自分の持分だけを売るとき

単独で売れ、共有物の分割も請求できます(民法256条)。ただ、持分だけでは買い手がつきにくいのが実際のところです

だからこそ、親が元気なうちに不動産の行き先を決めておく意味があります。誰が引き継ぐのか。次のどちらにするのか。

どちらがよいかは、ご家族ごとに違います

お子さんが住み続ける

住み慣れた家を離れることが、ご本人の負担になる場合もあります

売って現金にしてから分ける

分けやすく、生活費にも充てやすい財産です

家を「お子さんが住み続ける」か「売って現金にしてから分ける」かを左右で比べた絵。

当社がお手伝いできるのは、この不動産の部分です

売るとしたらいくらか、期間はどのくらいか、持ち続けるとどうなるか。判断の材料をお出しします(査定の考え方は不動産査定にまとめています)。

お金で残すときの仕組みと、税の扱い

現金や預金をそのまま残すと、管理する人が要ります。そこで、渡し方そのものに仕組みを組み込む方法と、相続税の負担を軽くする制度があります。

特定贈与信託

信託銀行などに財産を信託し、そこから生活費や医療費を定期的に渡していく仕組みです。

贈与税がかからない額は、障害の程度による区分で違います

特別障害者

6,000万円まで、贈与税がかかりません

特別障害者以外の特定障害者

3,000万円まで。精神に障害がある方が対象で、身体障害だけの場合は入りません

※特定障害者を受益者(信託の利益を受け取る人)とする信託の、信託財産の価額です。

利用するときは「障害者非課税信託申告書」を、信託会社などの営業所を通して、お子さんの納税地を管轄する税務署長に出します。信託銀行や税理士の先生にご確認ください。

出典:国税庁 タックスアンサー No.4405「贈与税がかからない場合」

心身障害者扶養共済制度(しょうがい共済)

保護者が掛金を納め、お子さんへ年金が生涯支払われます

保護者

掛金を納める

加入時の年齢に応じて7段階、月額9,300円から23,300円です。2口まで加入できます。

障害のあるお子さん

年金を生涯受け取る

1口あたり月額2万円。保護者が亡くなったとき、または重度障害の状態になったときから支払われます。

※都道府県と指定都市が実施している制度です。

加入できる保護者

  • その都道府県・指定都市に住所がある
  • 加入する年度の4月1日時点で65歳未満
  • 特別の疾病または障害がなく、生命保険契約の対象となる健康状態
税の扱いも決まっています
掛金 所得税・地方税の対象となる所得から控除されます
受け取る年金 所得税はかかりません
年金を受ける権利 相続税・贈与税の対象になりません

出典:独立行政法人福祉医療機構「しょうがい共済制度のごあんない」

相続税の障害者控除

相続や遺贈で財産を取得した障害のある法定相続人(法律で決まった相続人)は、相続税額から一定額を差し引けます。

85歳になるまでの年数1年につき、この額を差し引けます

10万円

1年につき

20万円

特別障害者は1年につき

※1年未満の期間は、切り上げて1年として計算します。

お子さんが若いほど、差し引ける額は大きくなります。控除しきれない分は、そのお子さんの扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹の他、3親等内の親族のうち一定の方)の相続税額から差し引きます。

注意点が2つあります

  • 財産を取得したときに日本国内に住所があり、そのときに障害者であり、法定相続人であることが必要です
  • 今回より前の相続でも障害者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。父の相続と母の相続で二度使うつもりでいると、見込みがずれます

出典:国税庁 タックスアンサー No.4167「障害者の税額控除」

よくあるご質問

きょうだいに多めに残して、そこから面倒を見てもらうことはできますか。

負担付遺贈という形はあります。負担が果たされないときは、相続人が期間を定めて履行を催告し、それでも果たされなければ家庭裁判所に遺言の取消しを請求できます。ただ、そこまで動く人が必要です。受け取った側の事情が、何十年かのあいだに変わることもあります。ご本人のために使われる形が確保できる方法と組み合わせて考えることになります。弁護士や司法書士の先生にご相談ください。

家を残すのと、売って現金で残すのと、どちらがよいですか。

一概には言えません。判断の材料になるのは、お子さんがその家に住み続けるのか、住まないなら維持費と管理を誰が負うのか、売るとしたらいくらになるのか、といったところです。売却の見込みと期間については、当社でお調べしてお伝えできます。

賃貸に出している物件を残すのはどうですか。

家賃が入る一方で、判断し続けなければならないことが残ります。空室が出たときの募集条件、修繕をするかどうか、入居者への対応。これを誰が担うのかを決めておく必要があります。後見人が管理することになった場合、後見監督人がついていれば、売却にはその同意が要ります。

まだ何も決めていないのですが、何から考えればよいですか。

財産の一覧をつくるところからで構いません。何がどこにあるか、不動産はどういう状態か。それが分かると、分けやすい財産と分けにくい財産が見えてきます。そのあとで遺言や信託の設計に入るほうが進めやすいと思います。不動産の状態を調べる部分は、当社でお手伝いできます。

制度の設計そのものは、弁護士・司法書士・税理士の先生の領域です。相続に伴う不動産のご相談は、方針が固まっていない段階でも承っています。

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