
中古の家を見に行くと、隣の塀が少しこちらに入っていることがあります。木の枝がはみ出していることもあります。「このまま買って大丈夫?」と心配になる方は多いです。このページでは、越境の意味と、買う前に整えておきたいことをまとめます。
このページのポイント
- 越境は、塀・屋根・木の枝・配管など、境界線をはみ出しているものを指します。
- 隣の木の枝は、頼んでも切ってもらえないときなど、自分で切れる場合があります。
- 越境は「覚書」で確認しておくと、将来のトラブルとローン審査の不安が減ります。
1. よくある越境

越境とは、隣との境界線を越えて、物がはみ出している状態です。よくあるのは次のものです。
- 塀・フェンス・ブロック塀(土台が境界をまたいでいる)
- 屋根のひさし、雨どい
- 木の枝、生け垣、根
- 水道管・下水管・ガス管などの配管(地中で隣の土地を通っている)
- 室外機、物置、擁壁(土を支える壁)
越境には「相手から自分の土地へ」と「自分の土地から相手へ」の両方があります。買う家が隣に越境している場合もあります。どちらも確認が必要です。
越境の確認には、境界がはっきりしていることが前提です。境界が決まっていないなら、確定測量が先です。くわしくは確定測量のコラムをご覧ください。
2. 木の枝は自分で切れる?(民法233条の改正)
隣の木の枝が越えてきたとき、以前は「持ち主に切ってもらう」しかありませんでした。勝手に切ると、問題になるおそれがありました。
2023年(令和5年)4月1日に民法233条が改正されました。今は、次の場合に自分で枝を切れます。
- 持ち主に催告(切るように求めること)したのに、相当な期間内に切ってくれないとき
- 持ち主が誰か分からない、または居場所が分からないとき
- 急いで切る必要があるとき
根は、以前から自分で切ることができます。
ただし、原則は今も「持ち主に切ってもらう」です。まずは隣の方にお願いするのが基本です。催告は、日付の残る手紙などで行います。
かかった費用を請求できるかは、ケースによります。争いになれば弁護士の先生の領域です。
3. 越境の覚書の中身
塀や配管の越境は、すぐに直せないことが多いです。そこで、隣の方と「越境に関する覚書」を交わしておくのが一般的です。覚書とは、約束を書いた書面です。おもな中身は次のとおりです。
- 越境している物と場所(図面を添える)
- 越境していることを両方が確認したこと
- 今の物は、当面そのままでよいこと
- 建て替えや作り直しのときに、越境を解消すること
- この約束を、次の持ち主にも引き継ぐこと
ポイントは「次の持ち主にも引き継ぐ」の一文です。これがないと、隣が代替わりしたときに、また話し合いが必要になります。
覚書は、売主と隣の方の間で交わすのがふつうです。ただ、その覚書が買主を当然に縛るとは限りません。「引き継ぐ」と書いてあっても同じです。
そこで、引き渡しのころに、買主と隣の方で確認書を交わし直すことも考えます。
4. 売主にしてもらうこと・ローン審査への影響
越境がある家を買うときは、契約の条件として売主に次をお願いします。
- 境界の確定(まだのとき):隣の方と立ち会って境界を決め、図面を作ってもらいます。
- 越境の覚書の取得:隣の方と覚書を交わし、原本を引き渡してもらいます。
- 直せるものは直す:枝の剪定、物置の移動など、簡単に直せる越境は引き渡しまでに解消してもらいます。
- 契約前の説明書に書いてもらう:越境の有無と覚書の内容を、重要事項説明書に書いてもらいます。
住宅ローンの審査では、銀行が担保(家と土地)の価値を見ます。越境があると、将来の建て替えや売却に支障が出るおそれがあります。そのため、覚書があるか、境界が確定しているかを聞かれることがあります。
越境があるから必ず審査に落ちる、というわけではありません。ただ、覚書がないと説明に時間がかかります。契約前に整えておくと、審査も引き渡しもスムーズです。
出典:民法(e-Gov法令検索)第233条/杉並区「越境した竹木の枝の切除に関する規定について」
よくあるご質問
覚書がない家を買うと、どうなりますか。
すぐに困るとは限りません。ただし、建て替えやローン、売るときに支障が出る可能性があります。隣の代替わりのときに、もめる原因にもなります。買う前に整えてもらうのが確実です。
隣の枝を切るのに、どれくらい待てばいいですか。
法律は「相当な期間」としか書いていません。法務省の資料では、基本的には2週間程度とされています。急いで切る事情があるときは、待たずに切れる場合があります。個別の判断は弁護士の先生の領域です。
自分の家の塀が隣に越境していると分かりました。買っても大丈夫ですか。
隣の方が了解していて、覚書があれば問題は小さいです。了解がない場合、建て替え時に直す約束を覚書に書きます。費用の負担も先に決めておきます。
配管の越境はどうやって分かりますか。
水道局やガス会社の図面、下水道の台帳で確認できます。不動産会社に調べてもらってください。地中は見えないので、古い家ほど注意が必要です。
越境の扱いは、境界の状況と隣の方との関係で変わります。法律も改正されるので、最新の条文と現地の状況を確認してください。
隣との具体的なトラブルの対応は、弁護士の先生にご確認ください。
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。