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空き家を売ろうと思い、3社に査定を頼んだ。返ってきた査定書は、厚さも書き方もばらばら。査定額も、いちばん高い会社と低い会社で800万円違う。どれを信じればいいのでしょうか。答えは、査定額ではなく、その数字の「根拠」を比べることです。
このページは、手元に何社かの査定書がある人に向けて、査定書のどこを見て、何を聞けばよいかをまとめます。特定の会社をすすめるものではありません。査定の申し込み方や、机上の査定と訪問の査定の違いは、三鷹の不動産査定|家・マンション・土地を無料で、根拠つきでで説明しています。
このページのポイント
- 査定額は、多くの場合「3か月ほどで売れそうな値段」の見立てで、約束ではありません。会社には、値段の意見を言うときに根拠を示す決まりがあります(宅地建物取引業法34条の2第2項)。
- 査定書で見るのは5つ。①比べた取引の例 ②例との違いの調整 ③建物の扱い ④売れるまでの見込み ⑤前提の条件。
- 3社の査定書を、この5つで1枚の表に並べます。差の理由が分かれば、どの数字を土台にするかが決まります。
このページの内容
1. 査定額は「約束」ではなく「見立て」
査定額は、不動産会社が「このくらいなら、3か月ほどで売れそう」と見立てた値段です(業界で使われる査定のマニュアルは、3か月ほどで買い手が付くことを目安にしています)。その値段で売れることを約束するものではありません。高い査定を出した会社が、その値段で売ってくれるわけではないのです。
査定額とは別の「値段」
相続税の計算に使う値段(路線価など)や、固定資産税の評価額は、査定額とは別のものです。違いは相続税評価額とは|売れる値段・固定資産税評価額との違いで説明しています。
2. 査定書で見る5つの所
宅地建物取引業法では、会社が売る値段について意見を言うときは、その根拠をはっきり示さなければならないと決められています(34条の2第2項)。査定書は、その根拠が書かれた紙です。受け取ったら、次の5つを見ます。
- 1比べた取引の例成約か・時期・件数・距離
- 2例との違いの調整上げ下げの説明
- 3建物の扱い最も分かれやすい
- 4売れるまでの見込み何か月・見直し方
- 5前提の条件測量・片付け・不具合
① 比べた取引の例
査定の土台は、近くで似た家がいくらで取引されたかです。見る所は4つあります。
- 例は「実際に売れた値段(成約の値段)」か、「売り出し中の値段」か。売り出し中の値段は、まだ売れていない値段です。
- いつの取引か。この1年か、2〜3年前か。
- 何件載っているか。1〜2件だけでは、たまたまの値段に引っぱられやすい。
- どのくらい近いか。同じ町内か、駅の反対側か。
例の値段は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、近くの取引の値段と見比べられます。
② 例との違いの調整
例の家と、自分の家の違いを、値段に足したり引いたりした所です。駅からの距離、道路の幅、土地の形、日当たり、角地かどうかなどです。「どの点で、どれだけ上げ下げしたか」が書いてあるかを見ます。書いていなければ、「この家が例より低い(高い)のはどこですか」と聞きます。
③ 建物の扱い
空き家で、会社ごとに最も分かれやすい所です。築40年を超える木造の家では、考え方が分かれます。
ほとんど入れない
建物をほとんど値段に入れない。
少し値段を付ける
「直して住みたい人」向けに、少し値段を付ける。
壊す費用を引く
古い家を壊す費用を引いた「土地だけの値段」で出す。
どの考え方かで、数百万円の差が出ることがあります。家を残して売るか、壊して売るかの考え方は相続した家は「壊して売る」か「そのまま売る」か|解体の時期と費用の持ち方で説明しています。
④ 売れるまでの見込み
何か月で売れる想定か。売れなかったときに、いつ、どう見直すか。この2つが書いてある会社は、売り出した後の進め方まで考えています。
⑤ 前提の条件
境界がはっきりしているか、家財を片付けるか、雨漏りなどの不具合をどう考えたか。
前提A
今のまま売る
測量も片付けもしない。
前提B
測量をして、片付けた後に売る
同じ家でも、査定額が変わる。
前提が書いていなければ、「測量や片付けをしない前提ですか」と聞きます。
3. 3社の査定書を1枚の表に並べる
3冊の査定書を見比べるのは大変です。次の表に書き写すと、差の理由が一目で分かります。
| 見る所 | 1社目 | 2社目 | 3社目 |
|---|---|---|---|
| 査定額 | |||
| ① 比べた取引の例(成約か売り出し中か・時期・件数・距離) | |||
| ② 調整の説明(上げた点・下げた点) | |||
| ③ 建物の扱い(値段に入れたか・0円か・壊す費用を引いたか) | |||
| ④ 売れるまでの見込みと、見直しの計画 | |||
| ⑤ 前提の条件(測量・片付け・不具合) | |||
| 空欄の所(書いていなかったこと) |
「空欄の所」の行が大事です
書いていないことは、その会社に聞く質問になります。
4. ケーススタディ:3社の査定が800万円違ったAさん

(人物・会社・金額は、すべて説明のための仮の例です)Aさんは、神奈川県の住宅地にある実家(土地120㎡、築48年の木造)を相続しました。3社に訪問の査定を頼み、上の表に書き写しました。
| 見る所 | 1社目 | 2社目 | 3社目 |
|---|---|---|---|
| 査定額 | 3,400万円 | 3,000万円 | 2,600万円 |
| ① 比べた取引の例 | 2件。1件は売り出し中の値段、1件は2年前の成約で駅に近い | 成約5件。この1年で、同じ町内を含む | 成約4件。この1年 |
| ② 調整の説明 | 書いていない | 道路の幅と土地の形で下げた理由を表で説明 | 道路の幅で下げた、と一言 |
| ③ 建物の扱い | 200万円入れた | 0円 | 壊す費用を引いた |
| ④ 売れるまでの見込み | 書いていない | 3か月。決まらなければ1か月ごとに見直す | 2か月 |
| ⑤ 前提の条件 | 書いていない | 今のまま。片付けは売り主がする | 今のまま。家財ごと |
| 空欄の所 | ②④⑤ | なし | ②が短い |
Aさんは、不動産情報ライブラリで近くの取引も見ました。似た広さの土地付きの古い家は、この1〜2年で2,800万〜3,200万円ほどでした。表と取引の値段から、Aさんは差の理由をこう読みました。
1社目
3,400万円
例に売り出し中の値段が入り、成約の例も古い。建物に200万円入れた理由も書いていない。
2社目
3,000万円
成約の例が新しく数も多い。取引の幅の真ん中に入る。
3社目
2,600万円
壊す費用を引き、家財ごと早く売る前提。前提が違うので、低いのは当然だった。
3社目に聞くと、「片付けをして、急がないなら、もう少し上でも」という答えでした。つまり、3社の差800万円のうち、かなりの部分は「前提の違い」と「例の選び方の違い」でした。Aさんは、2社目の3,000万円を土台にして、売り出しの値段と見直す時期を決めました。
Aさんの決め方のコツ
- いちばん高い数字ではなく、根拠がいちばんはっきりしている数字を土台にした。
- 3社を同じ表に並べ、空欄の所を質問にした。
- 前提がそろっていない査定額は、そのまま比べなかった。
5. 査定書を読んだ後に聞く質問
表の空欄を埋めたら、次の質問で、会社ごとの考え方の違いを確かめます。答えを書き留めて比べてください。
| 質問 | 見たい所 |
|---|---|
| 例の中に、売り出し中の値段は入っていますか | 成約の値段を土台にしているか |
| 建物は値段にいくら入っていますか。その理由は | 建物の扱いに筋が通っているか |
| どんな人が買うと考えていますか | 住む人、建て替える人、業者。それに合った値段か |
| 3か月売れなかったら、どう見直しますか | 値下げだけでなく、見せ方・売り方の見直しがあるか |
| 測量・片付けをした場合、査定額はどう変わりますか | 前提を変えたときの差が分かるか |
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よくあるご質問
Q. 査定は何社に頼めばいいですか?
2〜3社が目安です。多すぎると、査定書を読んで比べる手間が増えます。その地域の取引にくわしい会社と、広い地域で営業している会社を混ぜると、見方の違いが分かりやすくなります。
Q. 机上の査定(現地を見ない査定)の査定書でも、5つの所は見られますか?
①と②は見られます。③と⑤は、家の中を見ていないので、仮の前提になっていることが多いです。机上の査定どうしで比べ、売り出しの値段を決める前に訪問の査定を頼むと確かです。
Q. 査定書に根拠がほとんど書いていません。
根拠は、口で説明してもらっても構いません。「比べた例と、上げ下げした点を教えてください」と頼んでください。説明を聞いて、表の空欄を埋めます。
Q. 査定額に納得できないときは?
根拠をもう一度聞きます。比べた例を変えるとどうなるか、建物の扱いを変えるとどうなるか、具体的に聞くと、値段の幅が見えてきます。納得できないまま契約する必要はありません。
3社の査定額が違うときは、数字の高さではなく、査定書に書かれた根拠で比べます。比べた取引の例、調整、建物の扱い、売れるまでの見込み、前提の条件の5つを、1枚の表に並べてください。空欄の所を質問にすれば、差の理由が分かり、どの数字を土台にするかが決まります。
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2第2項/東京都「マンション購入・売却ガイドブック」Ⅲ章/公益財団法人 不動産流通推進センター「既存住宅価格査定マニュアル利用の手引き」/国土交通省「不動産情報ライブラリ」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。