公開日

エアコンと給湯器は、入居者の暮らしに直結する設備です。真夏や真冬に壊れると、入居者は困り、大家さんは急いで直すことになります。急ぎの工事は、機種を選べず、費用も日数も読みにくくなります。
このページでは、交換の時期の目安と見積もりの見方、計画的に替える考え方をまとめます。相続でアパートを受け継いだら、まず「どの部屋の設備が何年目か」を一覧にするところから始めてください。
このページのポイント
- 交換の目安は、本体のラベルにある「製造年」と「設計上の標準使用期間」で決めます。給湯器は10年と表示されていることが多いです。
- 古い石油給湯機・石油ふろがまは、法律で点検の仕組みがあります。大家さんも持ち主として登録します。
- 8戸のアパートなら「空室になったら替える」と「古い順に計画して替える」を組み合わせると、冬の故障に追われにくくなります。
このページの内容
1. 交換の目安は「本体のラベル」で確かめる
設備の年数は、本体に貼られたラベル(銘板)で分かります。見るのは次の2つです。
製造年
いつ作られたか
設計上の標準使用期間
ふつうの使い方で、古くなっても安全に使えるとメーカーが決めた期間
エアコンは、国の「長期使用製品安全表示制度」の対象です。2009年4月からの製品は、本体に製造年と設計上の標準使用期間を表示することになっています。給湯器も、多くの製品で同じ表示があります。
| 設備 | 交換・点検の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| ガス給湯器 | 設計上の標準使用期間は10年が多い。製造後9年〜11年未満が点検の時期 | 日本ガス石油機器工業会 |
| ガス給湯器(長く使っているもの) | 設計上の標準使用期間の1.5倍(15年)を超えると、点検での異常が急に増える。点検せず取り替えを強くすすめる | 日本ガス石油機器工業会 |
| 石油給湯機・石油ふろがま | 法律の「特定保守製品」。メーカーが決めた点検期間に点検を受ける | 消費生活用製品安全法 |
| エアコン | 本体に表示された設計上の標準使用期間 | 長期使用製品安全表示制度 |
「標準使用期間=保証期間」ではありません
無料で直してもらえる期間とは、別の考え方です。
2. 石油給湯機は「所有者登録」を
灯油を使う石油給湯機と石油ふろがまは、法律で点検の仕組みがある「特定保守製品」です。2021年8月からは、対象がこの2品目だけになりました。
- 1持ち主が登録メーカーに名前と住所を届ける
- 2メーカーが管理登録の内容をもとに点検の時期を見る
- 3知らせが届く点検の時期にメーカーから
大家さんも「持ち主」に含まれます
経済産業省の資料では、持ち主には、家を貸している大家さんも含まれるとされています。入居者の安全に気を配る立場にあるからです。
相続で物件を受け継いだときは、持ち主の名前が変わります。メーカーに登録の変更を届け出てください。
3. 相続したら最初に作る「設備の一覧」
交換の計画は、一覧がないと立てられません。次の表をひな形にして、部屋ごとに1行ずつ書いてください。
| 部屋 | 設備 | メーカー・型番 | 製造年 | 標準使用期間 | 最後の点検・修理 | 次に替える目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 101 | 給湯器 | (ラベルを写す) | (ラベルを写す) | (ラベルを写す) | (管理会社に聞く) | (製造年+標準使用期間) |
| 101 | エアコン |
- 1ラベルを撮る写真に撮っておけば、次に見に行かなくて済む
- 2入居中の部屋は管理会社に入居者の都合のよい日に見せてもらう。点検や修理の記録も一緒にもらう
- 3早い順に並べ替える「次に替える目安」の年が早い順に。上から順に、空室や季節に合わせて替えていく
一覧ができると、お金の予定も見えます
何年にいくらくらいお金が要るかが見えてきます。毎年の家賃収入の中から、交換のためのお金を少しずつ取り分けておくと、急な出費に慌てずに済みます。
4. 交換の値段を左右すること
交換の値段は、機種・工事の内容・時期で大きく変わるため、このページでは相場の金額は載せていません。見積もりを取る前に、次の表で確かめることを押さえてください。
| 設備 | 値段を左右すること | 見積もりで確かめること | 工事の日数の目安 |
|---|---|---|---|
| エアコン(壁掛け) | 部屋の広さに合う能力、配管の長さ、室外機の置き場所 | 古い機械の取り外しと処分、家電リサイクルの料金が入っているか | 半日〜1日 |
| ガス給湯器(給湯のみ) | 号数(お湯を出す力)、置き場所 | 本体の型番、配管の直しが入っているか | 半日〜1日 |
| ガス給湯器(追いだき付き) | 号数、追いだきの配管 | 浴室側の部品の交換が入っているか | 半日〜1日 |
- 必ず2社以上から見積もりを取る
- 同じ機種・同じ工事の中身で比べる
冬は給湯器の注文が増えます
在庫がないと、工事まで何日も待つことがあります。その間、入居者はお風呂に入れません。
家賃が下がる目安(風呂が使えないと10%、3日を過ぎた分から)は、設備が壊れたときの大家の修繕義務で説明しています。
5. 「壊れてから」と「壊れる前に」を比べる
| 壊れてから替える | 計画して替える | |
|---|---|---|
| 費用 | 1台ずつ。急ぎで機種を選べない | まとめて見積もりが取れる |
| 入居者 | 使えない日が出る。不満が残る | 日程を相談して工事できる |
| 家賃 | 直るまで下がることがある | 下がらない |
| お金の準備 | 突然の出費 | 年ごとに予定が立つ |
| 向いている設備 | 比較的新しい設備 | 標準使用期間を過ぎた設備 |
一番手間が少ないのは、空室になったときに替えることです
入居者の予定を気にせず工事ができます。次の入居者には、新しい設備で案内できます。
6. ケーススタディ:8戸のアパートを相続したAさん
(説明のための仮の例です)Aさんは、築18年の木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。まず、全部屋のラベルを見て一覧にしました。
| 設備 | 状況 |
|---|---|
| ガス給湯器(給湯のみ)8台 | 全部、新築のときのまま。製造から約18年 |
| エアコン 8台 | 5台は製造から12〜14年、3台は5年以内に交換済み |
給湯器は8台とも「15年」を超えていました
標準使用期間(10年)の1.5倍を超えています。業界団体が「点検せず取り替えを強くすすめる」段階です。
Aさんは、2つの案を比べました。
| 案1:壊れたら1台ずつ | 案2:今年の秋に8台をまとめて替える | |
|---|---|---|
| 費用 | 1台ずつ急ぎで頼む(時期は読めない) | 出費は1年に集まる。まとめて見積もるので、1台あたりの費用が下がることも |
| 冬に壊れたとき | お風呂が使えない日が出る。家賃の減額、入居者の不満 | 冬の前に替え終えれば起きにくい |
| 退去のきっかけ | 「設備が古い」が理由になりうる | なりにくい |
自分の物件で使う、比べ方の式
古い給湯器は、どちらの案でもいずれ替えます。そのため、比べるのは交換の費用そのものではなく、案1だけに出る分です。「1台ずつ急ぎで頼んだ見積もり−まとめて頼んだ見積もりの1台分」×台数に、「お湯が出ない日の家賃の減額」と「退去が出たときの家賃×空く月数」を足します。この合計が大きいほど、案2が得です。Aさんの場合、1部屋が退去して1か月空くだけで65,000円になります。

順番は次のように決めました。
秋の初め
空室の1台を先に替える。入居中の7部屋に、工事の日程を相談する
冬の前まで
残りの7台を、日程の合う部屋から順に替え終える
替えたあと
一覧の製造年を書き直し、次に替える目安の年を入れる
そのため、8台とも冬の前に替えることにしました。出費は1年に集まりますが、まとめて見積もりを取り、工事も続けて頼めます。
エアコンは「空室になったら替える」
製造から12〜14年の5台は、空室になったら替えることにしました。入居中に壊れたら、そのときに交換します。真夏に故障したら3日以内に工事できるよう、見積もりを取った業者に前もって声をかけておきました。
交換の費用は、税金の計算で経費になります
何年に分けて経費にするか(減価償却)は、設備の種類や金額で変わります。税理士の先生に確かめてください。
よくあるご質問
Q. まだ動いているのに替えるのは、もったいなくないですか?
動いていても、中の部品は古くなっています。給湯器は、10年前後なら点検、15年を超えたら取り替えが目安です(1.の表)。
Q. 給湯器の能力(号数)は、同じものにすべきですか?
基本は、今と同じ能力で選びます。1Kで1人暮らしなら、今の能力で不便がないかを入居者に聞いてから決めてもよいでしょう。設置場所によって選べる機種が限られるため、業者に見てもらってください。
Q. 入居者がいる部屋のエアコンを替えるときは?
工事の日を入居者と相談し、半日ほど部屋に入ることを伝えます。民法では、建物を保つための工事を入居者は拒めないとされています(606条2項)が、日程の相談は欠かせません。
Q. 前の入居者が置いていったエアコンが古くなりました。
契約書で「設備」か「残置物」かを確かめてください。残置物のままなら、この機会に設備として新しく付ける方法もあります。扱いは設備が壊れたときの大家の修繕義務で説明しています。
エアコンと給湯器は、ラベルの製造年と標準使用期間で交換時期を決めます。まず全部屋の一覧を作り、空室と季節に合わせて替える順番を決めてください。
設備の交換に合わせて、家賃を上げられる工事かどうかを考えるときは、家賃を上げられる工事・上げにくい工事が参考になります。
出典:一般社団法人日本ガス石油機器工業会「点検でわかる経年劣化事故防止の重要性(家庭用ガス給湯機器版)」(2024年2月)、経済産業省「長期使用製品安全点検・表示制度」周知用パンフレット2021年版、民法 第606条(e-Gov法令検索)、国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。