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退去立ち会いの流れ|大家が前日までに準備することと、当日の確かめ方

公開日

荷物が運び出された空っぽの1Kの部屋で、50代の男性の大家さんと退去する20代の女性入居者が、窓のそばでクリップボードを見ながら一緒に壁を確かめている場面。

入居者が部屋を出るとき、大家さん(または管理会社)と入居者が一緒に部屋を見ることを「退去立ち会い」といいます。ここで部屋の状態をきちんと確かめておくと、敷金の精算でもめにくくなります。逆に、準備なしで臨むと、確かめもれや言った言わないが起きます。

このページでは、立ち会いの準備と当日の流れに絞って説明します。費用をどちらが負担するかの線引きは、原状回復のルール|大家が負担するもの・入居者が負担するものでくわしく説明しています。

このページのポイント

  • 立ち会いの前に「入居時の記録・契約書と特約・設備の一覧・鍵の本数」の4つをそろえます。
  • 当日は玄関から奥へ、決まった順で見ます。写真は日付つきで、入居時と同じ向きで撮ります。
  • 費用の金額はその場で決めない。見積もりを取ってから、明細を書面で出します。

1. 退去の連絡から立ち会いまで

国土交通省の標準契約書では、入居者は少なくとも30日前に解約を申し入れる形になっています(第11条)。実際の日数は、それぞれの契約書を見てください。

退去の予告を受けた日から次の入居までを早める段取りは、退去予告から次の入居まで早くするコツで説明しています。

退去の連絡から精算までの、だいたいの流れ

連絡を受けた日

退去日・立ち会いの日時を決める。転居先と、敷金を返す口座を聞いておく

1〜2週間前

下の「準備の4点」をそろえる

前日まで

入居者に、当日の持ち物(鍵すべて)と、電気・ガス・水道の止める手続きを伝える

当日

立ち会い(1Kで30分〜1時間ほど)

1〜2週間後

見積もりを取り、精算の明細を入居者に出す

立ち会いは「荷物がすべて出たあと」の「明るい昼間」に

荷物が残っていると、床や壁の下が見えないからです。明るい昼間なら、壁の汚れや床の傷が見やすくなります。

2. 準備の4点

立ち会いの前にそろえる4つ
準備するもの何を見るかない場合
入居時の記録入居時の確認書・写真。どこに、もともと傷や汚れがあったか管理会社や前の大家さんに残っていないか聞く
契約書と特約原状回復の特約、クリーニング代などの決まり契約書の写しを管理会社からもらう
設備の一覧どの設備が大家さんの物か(エアコン、照明など)契約書の設備欄から一覧を作る
鍵の本数入居時に何本渡したか鍵の受け渡しの記録を探す

国の確認リストを印刷して持っていくと、見もれが減ります

国土交通省の原状回復ガイドラインでは、入居時と退去時にチェックリストを作り、当事者が立ち会って部屋ごとの状態を確かめることが大切だとしています。ガイドラインには「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」の書式もあります。

相続したアパートで、入居時の記録が見つからないとき

退去のときの記録だけでも丁寧に残しておきます。次の入居者からは、入居時の写真を必ず残すようにしましょう。

3. 当日の持ち物

忘れやすい物も含めて、次の物を持っていきます。

当日の持ち物と使う場面
持ち物使う場面
入居時の写真(印刷かタブレット)傷や汚れが入居時からあったか、その場で比べる
確認書(2部)双方で名前を書き、1部ずつ持つ
カメラ(スマートフォン)日付つきで写真を撮る
メジャー・ペン傷の大きさを写真に写す
懐中電灯収納の奥、流しの下、天井の隅を見る
契約書の写し特約や設備の欄をその場で確かめる

帰りに一言、伝えておくと安心されます

入居者に「明細はいつごろ、どの方法で届くか」を伝えておきます。

4. 当日の流れ:玄関から奥へ

当日は、次の順で見ると、見もれが少なくなります。

玄関から奥へ、決まった順で見ます

1. 玄関

ドア・鍵・下駄箱・床

2. 台所

流し台・コンロ・換気扇・収納の中

3. お風呂・トイレ・洗面所

カビ、水あか、排水の流れ、換気扇

4. 部屋

床・壁・天井・窓・網戸・収納の中

5. 設備の動作

エアコン、給湯器(お湯が出るか)、照明、インターホン

6. ベランダ

物の置き忘れ、排水口

7. 鍵の回収とメーター

鍵の本数を数える。電気・ガス・水道のメーターを写真に撮る

写真の撮り方

  • 入居時と同じ場所・同じ向きで撮ると比べやすくなります
  • 傷や汚れは、近くからの写真と、場所が分かる引きの写真の2枚を撮ります
  • 大きさが分かるよう、メジャーやペンを横に置くのも1つの方法です

最後に、確認書に双方で名前を書きます

ここで書くのは「どこに、どんな傷や汚れがあったか」までです。

5. その場で決めないこと

費用の金額や負担の割合は、その場で決めないでください

理由は3つあります。

  • 修理の費用は、業者の見積もりを取らないと分からない
  • 負担は、古くなった分を差し引いて考える必要がある
  • その場で急いで決めると、あとで「納得していなかった」となりやすい
金額は、後日、書面で出します

立ち会いの当日

どこに、どんな傷や汚れがあったか

確認書に書く

後日

見積もりと精算の明細

負担の割合を書いた明細を作り、双方が合意する

国の標準契約書の解説でも、負担の割合を書いた精算の明細を作り、双方が合意することが望ましいとされています。敷金は、部屋を返してもらったあとに、入居者が払うべき分を差し引いて返します(民法622条の2)。

ペットを飼っていた部屋の退去の費用の考え方は、アパートをペット可にするか(4. 退去時の費用の考え方)で説明しています。

6. 例:8戸のアパートを相続したAさん

※説明のための仮の例です。

Aさんの木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)の103号室で、6年住んだ入居者から退去の連絡が来ました。Aさんは、次の予定で進めました。

Aさんの予定

連絡の日(退去の35日前)

立ち会いを退去日の午前10時に決めた。転居先と口座を聞いた

退去の2週間前

管理会社から入居時の写真12枚と確認書をもらった。契約書の特約(クリーニング代)を確かめた

退去の3日前

入居者に「鍵2本を当日お持ちください」と連絡

退去日

立ち会い(45分)

退去の10日後

業者の見積もりを取り、精算の明細を郵送

当日、入居時の写真と比べて見つかったのは、次の4点でした。

見つかった所入居時の写真立ち会いでの記録
部屋の壁の画びょうの穴(数か所)なし写真2枚。負担は線引きの考え方で後日判断
押し入れのふすまの破れ(1枚)なし写真2枚。入居者に心当たりを聞き、確認書に書いた
台所の床の色あせ少しあり入居時からあったと確認
給湯器のエラー表示—設備の不具合。大家さんが直す
部屋の玄関で、50代の大家さんが退去する女性から鍵を受け取り、2人で確認書を見ながらうなずいている場面。

床の色あせ

入居時の写真に写っていたため、その場ですぐに話がついた

給湯器

製造から15年たっていたため、空室のうちに交換することにした。交換の考え方はエアコン・給湯器の交換時期と費用へ

画びょうの穴とふすま

確認書には「あった」とだけ書き、負担はその場で決めなかった

10日後、明細を送りました

見積もりと、古くなった分を差し引いた計算をつけました。入居者からは「分かりやすかった」と返事があり、そのまま敷金を精算できました。

次の募集の準備は、入居者募集の流れと広告料で説明しています。

次の入居者を迎える前の鍵の交換と、その費用の考え方は、入居者が替わるときの鍵の交換は誰が払うで説明しています。

よくあるご質問

Q. 入居者が立ち会いに来られないと言っています。

遠方への引っ越しなどで来られないこともあります。その場合は、大家さん側だけで確かめ、写真と確認書を入居者に送って見てもらいます。後日、内容に意見があれば聞く、と伝えておきましょう。

Q. 立ち会いは、管理会社に任せてもよいですか?

任せられます。その場合も、写真と確認書は必ずもらってください。設備の不具合など、大家さんが直す所が見つかることもあるからです。

Q. 敷金は、いつまでに返せばよいですか?

民法では、部屋を返してもらったときに、差し引いた残りを返すとされています。何日以内という日数は民法に書かれていません。契約書に期限があればそれに従い、なければ見積もりを取ったら早めに明細を出してください。

Q. 入居者の荷物が残っていました。

勝手に捨てないでください。まずは入居者に連絡し、引き取るか処分してよいかを書面で確かめます。連絡が取れない場合の進め方は、弁護士の先生に相談してください。

退去立ち会いは、準備で9割が決まります。入居時の記録をそろえ、当日は決まった順で見て、金額は後日書面で出してください。

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)、国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)、民法 第621条・第622条の2(e-Gov法令検索)、東京都 住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」(第4版改訂、令和4年12月)

その他のテーマは不動産コラムにまとめています。

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