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確定申告で「これは経費になるのか」と迷う支出は、毎年出てきます。経費にすべきものを入れ忘れると、税金を多く払うことになります。反対に、経費にならないものを入れると、後で直すことになります。
このページでは、大家さんが迷いやすい支出を表で仕分け、判断の物差しをまとめます。最後の判断は、税理士の先生に確かめてください。所得の計算の流れは大家の確定申告|不動産所得の計算で説明しています。
このページのポイント
- 経費になるのは「家賃収入を得るために直接必要」で「家のことと分けられる」支出です。
- 借入れの元本の返済、所得税・住民税、相続税は経費になりません。
- 大きな修繕は、その年の経費(修繕費)か、何年かに分けて経費にする(減価償却)かを分けます。20万円・3年・60万円が目安の物差しです。
このページの内容
1. 経費になるかを決める2つの物差し
国税庁は、不動産所得の必要経費を「不動産収入を得るために直接必要な費用」としています。家のことと仕事の両方にかかわる費用は、仕事の分が「明らかに区分できる」場合に、その分だけ経費になります。
迷ったら、次の2つを自分に聞いてください。
この支出は、アパートを貸すために必要だったか
いいえ経費にはなりません
はい
自分や家族の暮らしの分と、はっきり分けられるか
いいえ分けられない分は経費になりません
はい
経費になる見込みが高い分けられた仕事の分だけが経費です
記録を残しておきましょう
支出の日付・金額・相手・何のためかが分かる記録を残します。
2. 経費になる主なもの
| 支出 | 経費になるか | 注意 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | なる | 賃貸に使っている部分だけ |
| 火災保険料・地震保険料 | なる | 賃貸の建物の分。何年分かまとめて払ったときは、原則としてその年に当たる分だけが経費で、残りは翌年以後に回す(細かい扱いは税理士の先生に確かめる) |
| 管理会社への管理料 | なる | ― |
| 入居者募集の広告料・大家が払う仲介手数料 | なる | ― |
| 共用部の清掃・消防設備の点検 | なる | ― |
| 共用部の電気代・水道代 | なる | 自宅の分と混ざらないようにする |
| 修繕費 | なる | 大きな工事は、減価償却になることがある(次の章) |
| 借入金の利子 | なる | 利子だけ。元本はならない |
| 税理士の先生への報酬 | なる | ― |
| 物件への交通費・入居者との通信費 | なる | 私用と分ける |
| 相続した物件の登記の登録免許税 | なる | 賃貸に使う物件の分 |
| 減価償却費 | なる | 建物・設備を何年かに分けて経費にする |
相続の登記の登録免許税は、見落としやすい経費です
相続でアパートを引き継いだとき、名義を変える登記で払った登録免許税は、賃貸に使う物件なら必要経費にできると、国税庁は説明しています。登記の領収書を残しておいてください。
3. 経費にならない主なもの
| 支出 | 経費にならない理由 |
|---|---|
| 借入金の元本の返済 | 借りたお金を返しているだけで、費用ではない |
| 所得税・住民税 | 法律で経費にならないと決まっている |
| 相続税 | 財産を受け継いだことにかかる税で、家賃を得るための費用ではないため |
| 延滞税・加算税・罰金 | 同じく経費にならない |
| 国民健康保険税・国民年金保険料 | 個人の負担。経費ではなく、所得から引く「控除」で扱う |
| 自宅の分の固定資産税・光熱費 | 家のことの費用 |
| 家族との食事・私用の車の費用 | 賃貸と関係が薄い |
元本
経費にならない
借りたお金を返しているだけ
利子
経費になる
銀行の「返済予定表」で、その年に払った利子の合計を確かめる
土地を買うための借入れの利子に注意
土地を買うための借入れの利子は、赤字のときに給料と相殺できない部分があります。
4. 修繕費か、減価償却か
大きな工事をしたときに、いちばん迷うのがここです。
修繕費
壊れた所を元に戻す、古くなった所を維持する工事。その年の経費になる
資本的支出
建物の値打ちを上げる、長持ちさせる工事。何年かに分けて経費にする(減価償却)
国税庁は、次のどれかに当たれば修繕費にできるとしています。
金額
1回の工事が20万円未満
周期
おおむね3年以内ごとにくり返す工事
迷うとき
修繕か改良か分からない部分が60万円未満、または建物の前年末の取得価額のおおむね10%以下
どれにも当たらないときは、工事の中身で判断します
名前ではなく、実際に何をしたかで決まります。「外壁の塗り直し」でも、元の状態に戻すものか、性能を上げるものかで扱いが変わることがあります。見積書に工事の中身を細かく書いてもらうと、判断しやすくなります。
10万円未満の物の扱いには例外があります
10万円未満の物(使える期間が1年未満の物も)は、買った年に全額を経費にできるのが原則です。ただし、2022年4月以降に取得し、主な仕事でない「貸し付け」に使う物には、この扱いが使えません。賃貸の部屋に置くエアコンや照明などが当たるかは、税理士の先生に確かめてください。
減価償却の計算は減価償却とは|大家向けにやさしくでくわしく説明しています。
5. ケーススタディ:8戸のアパートを相続したAさんの1年
※説明のための仮の例です。
Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。1年の支出を集めると、迷うものが出てきました。国税庁の物差しに当てはめて、仕分けました。
| 支出 | 金額 | 仕分け | 理由 |
|---|---|---|---|
| 退去後の壁紙の張り替え(1室) | 120,000円 | 修繕費 | 20万円未満。元に戻す工事 |
| 給湯器の故障の修理(1室) | 45,000円 | 修繕費 | 20万円未満 |
| 共用廊下の照明の電球交換 | 8,000円 | 修繕費 | 少額。元に戻すもの |
| 外階段のさびの補修と塗装 | 180,000円 | 修繕費 | 20万円未満 |
| 屋根のふき替え(耐久性の高い素材に) | 1,500,000円 | 税理士の先生に確認 | 20万円以上。性能を上げる部分があれば減価償却 |
| 相続の登記の登録免許税 | 96,000円 | 必要経費 | 賃貸の物件の登記 |
| アパートのローンの返済 | 1,200,000円 | 元本は経費外 | 利子の分(例:150,000円)だけ経費 |
| 相続税 | 1,800,000円 | 経費外 | 家賃を得るための費用ではない |
| 物件への往復のガソリン代 | 24,000円 | 必要経費 | 記録(日付・目的)を残した分 |
| 自宅のパソコン | 120,000円 | 一部を経費にするか確認 | 私用と分ける。使う割合の根拠が要る |
※金額は、20万円などの物差しに当てはめるための、説明のための仮の数字で、実際の値段ではありません。
623,000円
すぐ経費にできる合計
150万円
屋根のふき替え(扱いを確認)
120万円
ローンの返済(利子だけ経費)
※623,000円=壁紙120,000+給湯器45,000+電球8,000+外階段180,000+登録免許税96,000+利子150,000+ガソリン代24,000。
屋根の150万円は、全部が修繕費ならその年の経費、資本的支出なら何年かに分けて経費になります。Aさんは、工事会社に「元の素材との違い」と「工事の内訳」を書いた書類を出してもらい、税理士の先生に相談することにしました。
よくある間違い:ローンの返済をそのまま経費に入れる
ローンの返済120万円を、そのまま経費に入れるのはよくある間違いです。Aさんは、銀行の返済予定表から利子の合計を書き写しました。

6. 領収書の残し方
経費の判断は、記録があってこそできます。次の3つを習慣にしてください。
- 1月ごとに分ける領収書・請求書は、月ごとに袋かファイルに分ける
- 2工事はひとまとめ見積書・請求書・工事前と工事後の写真をひとまとめにする
- 3日付と目的をメモ交通費やパソコンなど私用と混ざるものは、日付と目的をメモに残す
帳簿や領収書は、保存が必要です
帳簿や領収書は、原則として一定の年数の保存が必要です。保存の年数は、白色か青色かでも違うので、税理士の先生に確かめてください。
よくあるご質問
Q. 物件を見に行くときの食事代は経費になりますか?
自分の食事は、ふつう経費になりません。入居者や工事会社との打ち合わせなど、賃貸に必要だったと説明できるかで考えてください。
Q. 相続のときに払った司法書士の先生への報酬は経費になりますか?
扱いは事情によって違います。登録免許税とは分けて、税理士の先生に確かめてください。
Q. 空室の期間の費用も経費になりますか?
入居者を募集している空室の固定資産税や清掃費などは、経費になるのが一般的です。貸すのをやめた部屋の費用は扱いが変わることがあります。
Q. 経費を入れ忘れた年があります。
申告の期限から5年以内なら、税金を正しい額に直すよう求める手続き(更正の請求)ができる場合があります。税理士の先生か税務署に相談してください。
賃貸の経費は「貸すために必要か」「家のことと分けられるか」で決まります。元本の返済と、所得税・住民税・相続税は経費になりません。大きな工事は、20万円・3年・60万円の物差しに当てはめ、迷ったら工事の書類をそろえて税理士の先生に確かめてください。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」、国税庁 タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」、国税庁 タックスアンサー No.2215「固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合」、国税庁 タックスアンサー No.1379「修繕費とならないものの判定」、国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」、国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」、国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。