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アパートを相続すると、翌年から確定申告をすることになります。会社員の方も、家賃収入があれば、多くの場合は申告が必要です。「何が収入で、何が経費か」が分かれば、計算そのものは難しくありません。
このページでは、不動産所得の計算の流れを、8戸のアパートで実際に計算しながら説明します。申告の書き方や個別の判断は、税理士の先生に確かめてください。
このページのポイント
- 不動産所得は「総収入金額−必要経費」。家賃だけでなく、更新料や返さない敷金も収入に入ります。
- 貸せる部屋が10室以上(一戸建ては5棟以上)かどうかで、青色申告の控除の額などが変わります。
- 相続した年は、亡くなった方の分と、相続人の分に分けて申告します。青色申告の申請には期限があります。
このページの内容
1. 確定申告が必要な人
会社員などで、給料以外の所得が20万円を超える人
給料を1か所からもらい、年末調整を受けている人は、給料以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
数えない
家賃の収入そのもの
数える
収入から経費を引いた後(不動産所得)
家賃収入がそれなりにあれば、ほとんどの場合、20万円を超えます
2月16日〜
3月15日
申告の期間(原則・翌年)
2. 不動産所得の計算式
計算式は1つです。
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費(−青色申告特別控除)
総収入金額に入るものと、入らないものを、下にまとめました。
収入に入らないもの(その時点では)
- 預かった敷金・保証金(返すお金だから)
収入に入るもの
- 家賃(その年の支払日が来た分)
- 共益費(電気・水道・掃除の代金として受け取る分も)
- 更新料・礼金
- 返さないことが決まった敷金・保証金
収入に入れる時期
原則として「契約で決めた支払日」です。
12月27日
1月分の家賃の支払日。原則、この年の収入になる
1月
実際の入金がこちらでも、変わらない
※遅れている家賃も、支払日が来ていれば収入に入れるのが原則です。
入金の管理は家賃の入金管理で説明しています。必要経費の中身は賃貸の経費になるもの・ならないものでくわしく説明します。
3. 「10室以上」で変わること
貸せる部屋がおおむね10室以上、一戸建てならおおむね5棟以上だと、「事業として」の貸し付けとして扱われます。これより少ないと、扱いが変わります。
| 項目 | 10室以上(事業として) | 10室未満 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 最高55万円(電子での保存かe-Taxなら最高65万円) | 最高10万円 |
| 家族に払う給与 | 専従者給与(青色)などが使える | 使えない |
| 取り壊しなどの損失 | 全額を経費にできる | 所得の額が限度 |
| 回収できなくなった家賃 | その年の経費にできる | 収入に入れた年にさかのぼって計算し直す |
※青色申告特別控除の額は、令和8年分までの決まりです(国税庁 No.1373)。令和9年分からの扱いは、国税庁の案内か税理士の先生にご確認ください。
「10室」は目安です
実際は全体を見て判断されます。
東京都では、10室以上の貸し付けに個人事業税もかかります
所得から290万円を引いた額の5%です。神奈川・埼玉・千葉の方は、県の税事務所で基準を確かめてください。
4. ケーススタディ:8戸のアパートを相続したAさんの計算
(説明のための仮の例です)Aさんは会社員です。木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続し、1年を通して貸しました。
- 空室は延べ4か月分、更新が2件
- 8戸なので「10室未満」
- 青色申告の承認を受けていて、控除は最高10万円
① 総収入金額
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 家賃 | 65,000円×(96か月−空室4か月)=65,000円×92か月 | 5,980,000円 |
| 更新料 | 65,000円×2件 | 130,000円 |
| 合計 | 6,110,000円 |
② 必要経費
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 管理料(入金された家賃の5.5%・税込) | 328,900円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 380,000円 |
| 火災保険料(その年の分) | 60,000円 |
| 修繕費 | 250,000円 |
| 共用部の清掃・消防設備の点検 | 150,000円 |
| 税理士の先生への報酬 | 100,000円 |
| 物件への交通費・通信費 | 30,000円 |
| 減価償却費 | 736,000円 |
| 合計 | 2,034,900円 |
※経費の金額は、説明のための仮の数字で、実際の値段ではありません。減価償却費736,000円は、減価償却とは|大家向けにやさしくで同じAさんのアパートについて計算した額です。
③ 不動産所得
- 1総収入金額6,110,000円
- 2必要経費を引く−2,034,900円 → 4,075,100円
- 3青色申告特別控除を引く−100,000円
- 4不動産所得3,975,100円
④ 税金はいくら増えるか
不動産所得は、給料などと合わせて税金を計算します。Aさんの給料の分の課税所得(各種の控除を引いた後)は300万円とします。不動産所得を足すと、課税所得は6,975,000円(1,000円未満切り捨て)です。
695万円を少し超えるので、税率23%の段になります
695万円を超えた部分にだけ23%がかかる計算です。国税庁の速算表で計算しました。
| 不動産所得なし | 不動産所得あり | |
|---|---|---|
| 課税所得 | 3,000,000円 | 6,975,000円 |
| 所得税(税率−控除額) | 3,000,000×10%−97,500=202,500円 | 6,975,000×23%−636,000=968,250円 |
| 復興特別所得税(2.1%) | 4,252円 | 20,333円 |
| 合計 | 206,752円 | 988,583円 |
約78.2万円
所得税と復興特別所得税の増加(988,583−206,752=781,831円)
約40万円
住民税の増加(目安で所得の10%)
約118万円
合わせて取っておく額
⑤ 青色申告の10万円は、いくらの差になるか
Aさんの所得の層では、いちばん上の部分にかかる所得税の税率は23%です。
約2.3万円
所得税・復興特別所得税(100,000×23%×1.021=23,483円)
約1万円
住民税
約3万円
合わせて年に少なくなる額
帳簿をつける手間と比べて、続けるかを決めてください。
5. 相続した年の申告
相続した年は、申告が2つに分かれます。
| 申告 | だれが | 対象の期間 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 準確定申告 | 相続人が、亡くなった方の分を | 1月1日から亡くなった日まで | 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 |
| 確定申告 | 相続人が、自分の分を | 亡くなった日の後から12月31日まで | 翌年3月15日 |
遺産分けが決まるまでの家賃を、だれの収入にするかは、相続したアパートの家賃は誰のものか|亡くなった後の家賃でくわしく説明しています。
青色申告を続けたいとき
相続人が自分で申請します。期限は、亡くなった方が青色申告をしていたかで変わります。
| 亡くなった方 | 亡くなった日 | 相続人の申請の期限 |
|---|---|---|
| 白色申告 | その年の1月1日〜1月15日 | その年の3月15日 |
| 白色申告 | その年の1月16日以後 | 引き継いだ日から2か月以内 |
| 青色申告 | 1月1日〜8月31日 | 亡くなった日から4か月以内 |
| 青色申告 | 9月1日〜10月31日 | その年の12月31日 |
| 青色申告 | 11月1日〜12月31日 | 翌年2月15日 |
この期限を過ぎると、その年は白色申告になります
相続税の申告と合わせて、早めに税理士の先生に相談してください。アパートの相続税は、貸家建付地とは|貸している家は相続税の評価が下がる理由でくわしく説明しています。

6. 1年の準備の流れ
申告の時期にあわてないよう、1年を通して準備します。
毎月
入金を確かめ、領収書をその月の袋にまとめる
4〜6月
固定資産税の通知が届いたら、保管する
修繕のたび
見積書・請求書・工事の写真をまとめる(修繕費か、減価償却かの判断に使う)
1月
1年分の入金と経費を集計する
2〜3月
申告する(e-Taxなら、青色の控除が上がる条件を満たすことがある)
よくあるご質問
Q. 赤字になったら、給料の税金は戻りますか?
不動産所得の赤字は、給料など他の所得と相殺できます。ただし、土地を買うための借入れの利子に当たる部分の赤字は相殺できません。くわしくは税理士の先生に確かめてください。
Q. 管理会社から届く報告書だけで申告できますか?
家賃と管理料の集計には使えます。固定資産税や保険料など、大家さんが直接払った経費は別に集めてください。
Q. 共有で相続したアパートは、だれが申告しますか?
原則として、持ち分に応じて、それぞれが自分の分を申告します。分け方は税理士の先生に確かめてください。
Q. 申告を忘れていた年があります。
気づいた時点で、早めに税理士の先生か税務署に相談してください。
不動産所得は「収入−経費」で出します。収入に入るもの、10室で変わる扱い、相続した年の2つの申告を押さえれば、流れはつかめます。税金の分は、家賃の手取りから先に取り分けておきましょう。具体的な計算と申告は、税理士の先生に確かめてください。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」、No.1373「事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」、No.1376「不動産所得の収入計上時期」、No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」、No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」、No.2070「青色申告制度」、No.2072「青色申告特別控除」、No.2260「所得税の税率」、東京都主税局「個人事業税」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。