公開日

業者に頼むほどではないけれど、月に一度は自分で実家を見に行っている。行けば窓を開け、水を流し、ざっと見て帰る。でも、前回と比べて何が変わったかは、よく覚えていない。空き家の傷みは少しずつ進み、気づいたときには直す費用がふくらんでいることもあります。
このページでは、印刷して使える点検表と、1回1時間で回れる順番、見つけた傷みの判断のしかたを説明します。業者に頼む場合の費用と比べ方は空き家の管理を業者に頼む|頼める作業と費用の比べ方で説明しています。
このページのポイント
- 点検は「外まわり→家の中→水回り→戸締まり」の決まった順番で、毎回同じ所を見ます。前回と比べられるよう、同じ場所の写真を撮ります。
- 国土交通省の「空き家管理チェックリスト」は、通気・換気、通水(排水口の水を切らさない)、屋根・外壁・塀の傷み、草木、郵便物などを挙げています。下の点検表は、これを月1回の作業に落とし込んだものです。
- 見つけた傷みは「すぐ直す(雨水が入る・人に危ない)」「次回までに手配」「様子を見る」の3つに分けて書きます。
このページの内容
1. 持っていく物
毎回の持ち物を決めておくと、忘れ物がなくなります。
| 持ち物 | 使い道 |
|---|---|
| この点検表(印刷して、クリップボードにはさむ) | 書き込み、前回との比べ |
| スマートフォン | 写真、メモ、懐中電灯 |
| 懐中電灯 | 押し入れ・床下の点検口・天井裏をのぞく |
| ゴミ袋2〜3枚 | チラシ・落ち葉・敷地のゴミ |
| ぞうきん・軍手 | 床や窓まわりのふき取り |
| ペットボトルの水(2Lほど) | 水を止めている家で、排水口に水を入れる |
| 家の鍵・メーターボックスを開ける道具 | 元栓の開け閉め |
2. 1回1時間で回る順番
家の中を何度も行ったり来たりしないよう、順番を決めます。2階建て・4部屋ほどの一戸建てなら、次の流れでおよそ1時間です。
0〜10分
着いたら、まず外を一周。郵便受けを空にする
10〜15分
家に入り、全部の窓と押し入れを開けて風を通す。メーターボックスの元栓を開ける
15〜35分
部屋ごとに、天井・壁・床・窓を見る。写真を撮る
35〜45分
水回り。全部の蛇口から水を出し、排水口とトイレに水を流す
45〜55分
掃除。窓を閉め、戸締まり。元栓を閉める(冬は水抜き)
55〜60分
点検表の「気づいたこと」を書き、写真の枚数を確かめて帰る
換気の時間
換気の時間は、窓を開けてから閉めるまでの30〜40分ほどになります。湿気の多い梅雨や夏は、少し長めに開けておきます。
3. 印刷して使う:月1回の点検表
次の表を印刷して使います。「結果」の欄には、次の印を書きます。△と×は、下の「気づいたこと」の欄に場所と中身を書き、写真を撮ります。
○
問題なし
△
様子を見る
×
直す・手配する
空き家 月1回の点検表
| 点検した日 | ____年__月__日(__曜) |
|---|---|
| 天気 | ____ |
| 点検した人 | ______ |
| 前回の点検日 | ____年__月__日 |
| 着いた時刻・帰った時刻 | __:__ / __:__ |
外まわり
| No | 見る所 | 見ること | 結果 |
|---|---|---|---|
| 1 | 屋根 | 道路や庭から見て、瓦やスレートのずれ・割れ、板金の浮きがないか | |
| 2 | 雨どい | 外れ・割れ・詰まり(草が生えていないか)、たわみ | |
| 3 | 外壁 | ひび割れ、はがれ、しみ、黒ずみ | |
| 4 | 窓・ガラス・雨戸 | 割れ、すき間、こじ開けた跡 | |
| 5 | 玄関・勝手口 | 鍵がかかっていたか、こじ開けた跡 | |
| 6 | 門・塀 | 傾き、ひび、ぐらつき | |
| 7 | 庭木・草 | 隣や道路に枝がはみ出していないか。草の伸び | |
| 8 | 敷地のゴミ | 投げ込まれたゴミ、吸い殻 | |
| 9 | 郵便受け | 郵便物・チラシを全部取り出したか | |
| 10 | 動物の跡 | ふん、巣、床下の通気口の破れ | |
| 11 | 給湯器・エアコンの室外機 | 傾き、管の保温材の破れ |
家の中
| No | 見る所 | 見ること | 結果 |
|---|---|---|---|
| 12 | におい | 家に入った時のカビ臭さ、下水の臭い | |
| 13 | 天井 | 雨漏りのしみ、たわみ(2階の天井、押し入れの天井も) | |
| 14 | 壁 | しみ、カビ、壁紙のはがれ | |
| 15 | 床 | へこみ、きしみ、ぬれた跡 | |
| 16 | 窓の内側・サッシ | 結露の跡、カビ | |
| 17 | 押し入れ・収納 | 湿気、カビ、虫 | |
| 18 | 床下の点検口(台所の床下収納など) | 水たまり、湿気、シロアリの土の筋 | |
| 19 | 電気 | ブレーカーの状態、照明がつくか、使わないコンセントが抜けているか | |
| 20 | 虫・小動物 | ふん、死骸、羽アリ |
水回り
| No | 見る所 | 見ること | 結果 |
|---|---|---|---|
| 21 | 元栓・メーター | 元栓を開けた後、蛇口を全部閉めた状態でメーターのパイロットが回っていないか | |
| 22 | 台所 | 蛇口から水を1分ほど出す。排水口から水を流す。流しの下の水漏れ | |
| 23 | 洗面所 | 同上。洗面台の下の水漏れ | |
| 24 | 浴室 | 水を出して流す。排水口の臭い。カビ | |
| 25 | トイレ | 2回流す。タンクの水漏れ、便器の水がたまっているか | |
| 26 | 洗濯機の排水口 | 水を流す(排水口の水を切らさない) | |
| 27 | 屋外の蛇口 | 水漏れ、凍結の跡 |
帰る前
| No | すること | 済み |
|---|---|---|
| 28 | 全部の窓・雨戸を閉め、鍵をかけた | |
| 29 | 元栓を閉めた(冬は蛇口を開けて水を抜いた) | |
| 30 | 使わない電気のブレーカーを落とした/照明のタイマーを確かめた | |
| 31 | 郵便物・ゴミを持ち帰った | |
| 32 | 玄関・裏口の鍵を確かめた | |
| 33 | 写真を撮った(外4方向、各部屋、気づいた所) |
気づいたこと(△・×を書いた所)
| No | 場所 | 中身 | 区分(すぐ直す/次回までに手配/様子を見る) | 前回と比べて |
|---|---|---|---|---|
| 近所の方から聞いたこと・連絡 | ____________________ |
|---|
4. 季節ごとに足す点検
月1回の表に、季節ごとの点検を足します。
| 時期 | 足す点検 | 理由 |
|---|---|---|
| 3〜5月 | 庭の草の伸び始め。羽アリが出ていないか | 草はここから一気に伸びる。羽アリはシロアリの合図のことがある(空き家の雨漏り・シロアリ) |
| 6〜7月(梅雨) | 換気を長めに。押し入れ・北側の部屋のカビ | 湿気がこもりやすい |
| 7〜9月 | 草刈り。蜂の巣。台風の前に、飛びそうな物を片付ける | 草木の苦情が出やすい時期(空き家の庭木・雑草) |
| 台風・大雨の後 | 臨時に見に行く。屋根・雨どい・塀・雨漏り | 早く見つければ直す費用が小さい |
| 10〜11月 | 落ち葉で雨どいが詰まっていないか。冬の凍結の準備 | 冬の前に管の保温材を確かめる |
| 12〜3月上旬 | 帰るたびに元栓を閉めて水抜き(冬の空き家|水道管の凍結・破裂を防ぐ)。雪の多い地域は雪の重み | 水道管の凍結・破裂 |
| 大きな地震の後 | 傾き、塀のひび、瓦のずれ、ガスの臭い | 周りへの危険を確かめる |
5. 見つけた傷みの分け方
点検で傷みを見つけたら、次の3つに分けます。迷ったら、上の段に入れてください。
すぐ直す
目安:雨水が入る。人やよその家に危ない。人が入れる
例:屋根材のずれ・天井の新しいしみ、塀の傾き、窓の割れ、鍵の壊れ
すること:その日のうちに業者へ連絡。応急の手当て(ブルーシート、板でふさぐ)
次回までに手配
目安:このままだと広がる
例:雨どいの詰まり、外壁のひび、枝のはみ出し、排水口の臭い
すること:見積もりを取り、次に行く日までに直す日を決める
様子を見る
目安:前から変わっていない、小さい
例:古いしみが広がっていない、小さなひび
すること:同じ場所の写真を毎回撮り、前回と比べる
放っておくと税が上がることがあります
傷みを放っておき、市区町村から「管理不全空家等」として指導や勧告を受けると、土地の固定資産税の特例が外れることがあります(管理不全空家とは)。
点検の記録と写真は、きちんと管理してきた証しにもなります。売るときに、買う人へ家の状態を伝える材料としても役に立ちます。
6. ケーススタディ:片道1時間半の実家に通うDさん

説明のための仮の例です。
Dさんは、千葉県の住宅地にある実家(築42年の木造2階建て)を相続しました。都内から電車で片道1時間半。毎月第2土曜に通うと決め、点検表を使い始めました。
4月の点検で気づいたこと
| No | 場所 | 中身 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 2 | 北側の雨どい | 落ち葉で詰まり、雨の跡が外壁に筋になっている | 次回までに手配 |
| 13 | 2階の和室の天井 | 隅に薄いしみ。3月の写真にもあった。広がっていない | 様子を見る |
| 25 | トイレ | 便器の水が少し減っていた | 次回までに手配(水を流す回数を増やす) |
Dさんは、雨どいの掃除を地元の工事店に頼み、5月の点検の前に済ませました。天井のしみは、毎回同じ場所から写真を撮りました。
6月の点検で
4月
様子を見る
2階の天井の隅に薄いしみ。3月の写真から広がっていない。
6月(梅雨の大雨の後)
すぐ直す
しみが4月の写真より一回り広がっていた。その日のうちに屋根の工事店に連絡。
屋根の板金の継ぎ目にすき間があり、小さな補修で済みました。写真で比べていたので、広がり始めてすぐに気づけました。
Dさんの1年の負担
48時間
移動3時間+点検1時間=4時間×12回
36,000円
交通費:往復3,000円×12回(金額は説明のための仮の例です)
夏の草刈りと、台風の後の臨時の見回りだけは、業者に頼むことにしました。自分で通う分と業者の組み合わせ方は空き家の管理を業者に頼む、空き家にかかる1年の費用の全体は空き家の年間の維持費で説明しています。
7. 記録の残し方
点検表
ファイルに日付順にとじ、前回の表を一番上にして持っていく
写真
毎回同じ場所・同じ向き。外は四隅から4枚、部屋は入口から1枚ずつ、気づいた所は近くと引きで1枚ずつ。アルバムは「空き家・年月」で分ける
共有
相続人が複数なら、表の写しと写真を共有。費用の分担の話もしやすくなる
相続税や名義変更も、まとめて相談したい方へ
当社は、税理士・司法書士と組んだ相続の相談窓口まとめる相続を運営しています。士業の手配や日程の調整も、窓口一つで進められます。
よくあるご質問
Q. 月1回では足りませんか?
国の資料は「定期的に」とし、回数は決めていません。月1回を基本に、梅雨や台風の後は臨時に行き、難しい月は業者と組み合わせてください。
Q. 電気や水道を止めていても点検できますか?
できますが、水を流す点検ができません。排水口の水が切れると下水の臭いや虫が上がってくるので、ペットボトルの水を持っていき、排水口とトイレに注いでください。水道・電気を残すかどうかは空き家の水道・電気・ガスは止める?残す?で説明しています。
Q. 屋根に上って見たほうがいいですか?
上らないでください。落ちる危険があります。道路や庭から見える範囲で確かめ、気になる所は工事店に見てもらいます。2階の窓から見える所は、窓から確かめます。
Q. 近所の方にお願いしておくことはありますか?
連絡先を伝え、「何か気づいたら教えてください」とお願いしておくと安心です。台風の後に様子を教えてもらえることもあります。郵便物があふれていないか気にしてもらえるだけでも、防犯の役に立ちます(空き家の防犯)。
空き家を自分で管理するなら、点検表を印刷し、毎回同じ順番で同じ所を見ることから始めてください。傷みは「すぐ直す・次回までに手配・様子を見る」に分け、同じ場所の写真で前回と比べます。続けていくと、家の変化に早く気づけるうえ、売るときや家族で話し合うときの記録にもなります。
出典:国土交通省 リーフレット「『自分は大丈夫!』と思っていませんか? 空き家には適切な管理が不可欠です。」(空き家管理チェックリスト)/国土交通省「所有する空き家は適切に管理を」/国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)」/東京都水道局「水漏れ(漏水)について よくある質問」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。