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入居者からの苦情の記録の残し方|1件1枚のひな形と、1年の見直し

公開日

午前の光が入る自宅の書斎で、50代の大家さんが電話の受話器を耳に当てながら、机のノートにペンで書きとめ、やさしくうなずいている絵。

「ごみ置き場が散らかっている」。「駐輪場に、見たことのない自転車が置きっぱなし」。「廊下の電気が切れたまま」。大家さんには、入居者からいろいろな苦情が届きます。1件ずつ対応して終わりにすると、同じ苦情が何度も来ます。話がこじれたときも、「いつ、何をしたか」を説明できません。

このページでは、苦情の記録に絞って、そのまま使えるひな形と、1年に1回の見直し方をまとめます。音の苦情の受け止め方と、注意の進め方は、騒音トラブルへの大家の対応で扱っています。

このページのポイント

  • 記録は1件1枚。「いつ・だれから・何を・どうした・どう終わったか」を同じ形で残します。
  • 事実と気持ちを分けて、そのつど書きます。消さずに書き足します。入居者の名前が入るので、鍵のかかる所に保管します。
  • 1年に1回、記録を1枚の表にまとめて見直します。管理会社に任せていても、苦情の報告を受け取って同じ表に入れます。

1. 記録が役に立つ3つの場面

記録があると、この3つの場面で助かります

苦情を言った人に、結果を伝えるとき

「〇日に確かめ、〇日に全戸へお願いしました」と、したことを具体的に伝えられる

話がこじれて、管理会社や弁護士の先生に相談するとき

記録がそのまま経過の説明になる

1年に1回、物件を見直すとき

同じ場所・同じ種類の苦情が見え、元から手を打てる

苦情への対応は、だいたい次の流れになります。

段階すること目安の時間
受け付けるひな形に沿って書きとめ、「確かめて、〇日までにご連絡します」と伝えるその日のうち
確かめる現場を見る。写真を撮る。日を変えて2〜3回見る3日以内に1回目
手を打ち、知らせる直す話は業者を手配。入居者どうしの話は全戸への知らせから。苦情を言った人に結果を伝える1〜2週間
終える・続ける1か月ほど様子を見て、終わりか、次の手かを決める1か月ほど

苦情を言った人の名前は、相手に伝えないのが基本です

入居者どうしの話のときです。全戸への知らせの書き方や、個別に注意するときの進め方は、騒音の例で騒音トラブルへの大家の対応にまとめています。水漏れなど急ぎの話は、雨漏り・水漏れで入居者に損害が出たときで説明しています。

2. 記録のひな形(1件1枚)

次の表を、紙かパソコンの表計算に写して使ってください。1件ごとに1枚にし、受け付けた順に番号を振ります。

項目書き方記入例
番号年と通し番号2026-04
受け付けた日時年月日・時刻2026年4月6日(月)19時10分
受け付け方電話・メール・手紙・直接電話
申し出た人部屋番号と名前(手元の控えだけ)201号室 〇〇様
種類大家さんが直す話・入居者どうしの話・急ぎの話入居者どうし
申し出の中身本人の言葉に近い形で、事実と希望を分けて事実:ごみ置き場に収集日以外のごみが出ている。カラスが散らかす。希望:張り紙をしてほしい
伝えた期限いつまでに何を連絡すると言ったか4月9日までに、確かめた結果を電話する
確かめたこと日付・時刻・見たこと・写真の有無4月7日朝:袋2つ。4月8日朝:袋1つ。写真あり
したこと日付と中身4月9日:全戸に手紙を配布。4月10日:ごみ置き場にネットを追加
申し出た人への報告日付と方法と中身4月9日 電話:全戸に手紙を配ったこと、ネットを足すことを伝えた
その後の様子1週間後・1か月後4月16日:収集日以外のごみなし。5月7日:なし
終わった日・状態終わり・続ける・相談中5月7日 終わり
費用修理代などネットの代金(領収書の額)
メモ次に生かすこと新しい入居者に、ごみの日の案内を入居時に渡す

3. 書くときの決まり

決まり理由例
事実と、気持ちや推測を分けるあとで読んだ人が、何が確かなのかを分けられる×「202号室の人がだらしない」
○「4月7日朝、ごみ置き場に袋2つ。出した人は分からない」
日付と時刻は、そのつど書くあとからまとめて書くと、順番や日にちがずれる電話を切ったらすぐ書く
消さずに書き足す書き直した跡が残っていると、記録が信用される直すときは線を引き、日付を添える
申し出た人の言葉は、なるべくそのまま大家さんの言い換えで、意味が変わることがある「毎朝カラスが散らかしている」
写真は番号と日付で結びつけるどの件の写真か、後で分からなくなる「2026-04_0407_1.jpg」

4. 記録の保管と、見せる範囲

記録には、入居者の名前や部屋番号が入ります。

数が少なくても「個人情報取扱事業者」に当たります

賃貸の事業として入居者の情報をまとめて扱う大家さんは、数が少なくても、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」に当たります。扱う人数で外れる決まりは、平成29年5月30日になくなりました。情報がもれたり、なくなったりしないよう、保管に気を配る必要があります。

決めておくこと目安
置き場所紙は鍵のかかる引き出し。パソコンのファイルはパスワードを付ける
見せる範囲入居者に見せるのは、全戸への知らせなど名前の出ない物だけ。ひな形そのものは見せない
残す期間法律で決まった年数はない。入居者が退去してからも、数年は残しておくと安心
捨て方紙はシュレッダー。ファイルは消したことを確かめる

5. 管理会社との分担

管理会社に任せている場合、苦情の受け付けと記録は、管理会社がすることが多いです。

管理会社からは、少なくとも1年に1回、報告書が届きます

国に登録した賃貸住宅管理業者は、少なくとも1年に1回、管理業務の報告書を大家さんに渡して説明する決まりがあります。その報告書には、「入居者からの苦情の発生状況と対応状況」を書くことになっています。

分担を決める所決めておくこと
受け付けと記録管理会社がする。記録の項目が上のひな形と同じくらいそろっているか
大家さんへの報告急ぎの話はすぐ。それ以外は毎月まとめて、など。年1回の報告書だけで足りるか
大家さんが決めること修理の発注、費用のかかる対策、個別の注意の書面
記録の受け渡し管理会社を変えるときや契約が終わるときに、それまでの記録をもらえるか

報告を受け取ったら、ひな形の項目と見比べて、足りない所を聞いてください。大家さんの手元でも、受け取った報告を下の「1年分の表」に入れておくと、管理会社を変えても記録が途切れません。

管理会社に任せる仕事の範囲は、管理委託料の相場と、含まれる仕事で説明しています。

6. ケーススタディ:Aさんが1年分の苦情を見直した

※人物・数字は説明のための仮の例です。

Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。相続してから1年で、苦情が7件ありました。ひな形に沿って記録していたので、1年分を1枚の表にまとめられました。

番号中身種類受け付けから最初の連絡まで終わるまで
01共用廊下の電気が切れている直す話当日2日
02駐輪場に持ち主の分からない自転車入居者どうし当日45日
03洗濯機置き場の排水のにおい直す話翌日7日
04ごみ置き場の散らかり(ひな形の記入例の件)入居者どうし当日31日
05郵便受けにチラシがあふれている部屋がある入居者どうし当日14日
06階段の手すりのぐらつき直す話当日10日
07ごみ置き場の散らかり(2回目)入居者どうし当日続けて様子を見ている

※件数・中身・日数は、説明のための仮の例です。

表にして、Aさんは次のことに気づきました。

表にすると、手を打つ場所が見えます

気づいたこと

7件のうち2件が、ごみ置き場の話

決めたこと

ネットと、ごみの日の案内を付ける

ごみの日の案内は絵だけで分かる形に。入居時にも渡します。

気づいたこと

自転車の話は、終わるまで45日かかった

決めたこと

部屋番号のシールを配る

貼っていない自転車には、一定の期間を置いて知らせる手順を決めます。

気づいたこと

直す話は、どれも10日以内に終わった

決めたこと

このやり方を続ける

手すり・電気は、年2回の見回りで先に見つけます。

自転車の件の進め方

Aさんは、持ち主の分からない自転車に、すぐに手を付けませんでした。

  1. 1全戸に手紙「〇月〇日までに部屋番号のシールを貼ってください」
  2. 2写真と張り紙期限を過ぎても貼られていない1台は、写真を撮り、張り紙で知らせる
  3. 3警察に相談そのあとで相談した

持ち主の分からない物を、勝手に処分しない

あとでもめることがあるからです。この経過も、記録にそのまま残しました。

2年目、Aさんはこの1年分の表を、見回りの日の前に見返すようにしました。苦情が来る前に、同じ所を先に見られるからです。

朝の光の中、アパートのごみ置き場の前で、50代の大家さんが新しく付けたネットを整え、通りかかった20代の入居者の女性と会釈を交わしている絵。

よくあるご質問

Q. 同じ人から、何度も苦情が来ます。

1件ずつ記録し、事実を確かめた結果を、そのつど伝えます。確かめても事実が見つからないときは、「確かめたこと」と「見つからなかったこと」をそのまま記録し、そのまま伝えます。続くときは、記録を持って管理会社や弁護士の先生に相談してください。

Q. 電話の内容を録音してもよいですか?

聞き違いを防ぐために録音するなら、はじめに「記録のため録音します」と伝えておくと、もめごとになりにくくなります。録音しても、ひな形には要点を書いておきます。

Q. 記録は、紙とパソコンのどちらがよいですか?

どちらでも構いません。続けやすい方を選んでください。1年分の表を作るなら、パソコンの表計算の方が並べ替えや数えるのが楽です。

Q. 入居者の話し方が強く、怖いと感じることがあります。

一人で会わず、電話は書面やメールに切り替えてもらってください。身の危険を感じたら、ためらわず警察に相談します。記録は、こういうときこそ役に立ちます。

苦情は、記録の残し方で、その後の進み方が変わります。1件1枚のひな形で、事実と気持ちを分けて、そのつど書いてください。1年に1回、1枚の表にまとめて見直せば、同じ苦情を元から減らす手が打てます。

出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q1-50/賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第20条(e-Gov法令検索)/賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則 第40条(e-Gov法令検索)/国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)」

その他のテーマは不動産コラムにまとめています。

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