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賃貸物件の火災保険と施設賠償|大家が入る保険・入居者に入ってもらう保険の分け方

公開日

晴れた日、2階建ての木造アパートの外階段の前で、60代の女性の大家さんと40代の娘が、書類の入ったクリアファイルを手に建物を見上げながら話している場面。

アパートを相続したら、建物の保険がどうなっているかを、早めに確かめてください。保険の契約者が亡くなった親のままでは、いざという時に手続きが進みにくくなります。また、賃貸の建物には、自宅とは違う「入っておきたい保険」があります。

このページでは、大家さんが入る保険と、入居者に入ってもらう保険の分け方を整理します。空き家の保険は空き家の火災保険|入れる保険と、断られたときで説明しています。

このページのポイント

  • 建物の火災保険は、同じ建物を建て直せる金額(再調達価額)で入ります。
  • 入居者の失火で建物が燃えても、燃え移った隣の部屋や共用部分の分は、火を出した入居者から賠償を受けにくい。だから大家さん自身の保険が要ります。
  • 外階段や塀などが原因で人がけがをしたときは、大家さんが責任を負うことがあります。これに備えるのが施設賠償責任保険です。

1. だれが、どの保険に入るか

アパートの保険は、大家さんと入居者で分けて考えます。

大家さんが入る保険と、入居者に入ってもらう保険

大家さんが入る

建物の火災保険/地震保険(火災保険とセット)/施設賠償責任保険/家賃の補償の特約など(任意)

入居者に入ってもらう

家財の火災保険/借家人賠償責任保険(家財の保険の特約)/個人賠償責任保険(特約)

備えること入る人保険
建物の火事・落雷・風災・水漏れなど大家さん建物の火災保険
地震・噴火・津波による建物の損害大家さん地震保険(火災保険とセット)
建物の不具合で、人にけがをさせた・物を壊した大家さん施設賠償責任保険
事故で部屋が使えない間の家賃大家さん(任意)家賃の補償の特約など
入居者自身の家具や家電入居者家財の火災保険
入居者が部屋を燃やした・水浸しにしたときの大家さんへの賠償入居者借家人賠償責任保険(家財の保険の特約)
入居者が下の階に水漏れさせたときの賠償入居者個人賠償責任保険(特約)

賃貸の建物の地震保険は、建物の持ち主(大家さん)が入るものです

入居者は、自分の家財の分だけ入れます。

入居者の保険は、契約書に書いて確かめます

入居の条件として契約書に書き、入居時に加入の証明を出してもらいます。更新の時期に、続けて入っているかも確かめましょう。

2. なぜ大家さん自身の保険が要るのか

「入居者の不注意で火事になったら、入居者に払ってもらえばいい」と思いがちです。でも、そう単純ではありません。

「失火責任法」という法律があります

火事を出した人に「重大な過失」がなければ、燃え移った先への賠償責任は負わない、という決まりです。たとえば、2階の部屋から出火して隣の部屋が燃えても、隣の部屋(大家さんの建物)への賠償を、ふつうの不注意では求めにくいのです。

一方、火を出した部屋そのものについては、入居者は「部屋を元どおりにして返す約束」を守れなくなります。これは契約の問題なので、借家人賠償責任保険で備えてもらいます。

燃えた場所によって、備える保険が違います

火を出した部屋

入居者の借家人賠償責任保険

燃え移った他の部屋・共用部分

大家さんの火災保険

※大家さんが建物の保険に入っていないと、燃え移った分は自分で直すことになります。

3. 建物の火災保険は「建て直せる金額」で

火災保険の金額の決め方には、2つの考え方があります。

時価で入ると、建て直すには足りないことが多くなります

時価

  • 建て直す金額から、古くなった分を引いた金額
  • 保険金で建て直すには、足りないことが多い

再調達価額(新価)

  • 同じ建物を今、建て直すのにかかる金額
  • 保険金で建て直せる

消防庁の資料も、時価で入ると、保険金だけで同じ建物を建て直すのは難しいと説明しています。築年数の古いアパートほど、時価は低くなり、差が大きくなります。

保険会社に「再調達価額でいくらか」を出してもらいます

その金額で入るのが基本です。建物の値打ちより高い金額で入っても、払われる保険金は増えません。

4. 地震保険の上限と、払われる割合

地震による火事や倒壊は、火災保険だけでは払われません。地震保険は、火災保険とセットで入ります。

30〜50%

保険金額は、火災保険の金額のこの範囲

5,000万円

建物の上限(アパートなどの共同住宅は扱いが違うので保険会社に確認)

1,000万円

家財の上限

5,000万円は、地震保険の法律の政令で決まった建物の上限です。ただ、賃貸アパートなどの共同住宅や、マンションの共用部分は扱いが異なります。日本損害保険協会も、くわしくは保険会社や代理店に問い合わせるよう案内しています。戸数の多いアパートをお持ちの方は、建物の上限がいくらになるかを保険会社に確かめてください。

損害の大きさで、払われる割合が決まります
全損100%
大半損60%
小半損30%
一部損5%

※保険金額に対する割合。それぞれ時価(の同じ割合)が上限です。

地震保険は、建て直しの全額をまかなうものではありません

生活や事業の立て直しのための保険だと考えてください。入るかどうかは、建物の古さ、地盤、借入れの残り、手元のお金で考えます。

5. 施設賠償責任保険が要る理由

建物の「設置や保存の不具合」で人にけがをさせたときの責任は、民法で次の順に決まります。

持ち主の責任は、過失がなくても負う重いものです

まず、建物を使っている人(占有者)

建物の不具合で人にけがをさせたとき、まず責任を負います

占有者が注意を尽くしていたとき

責任は持ち主に移ります

持ち主(大家さん)

過失がなくても責任を負います

アパートで起こりやすいのは、次のような場面です。

  • さびた外階段の手すりが外れ、入居者が転んでけがをした
  • ブロック塀や外壁の一部が崩れ、通行人や車に当たった
  • 共用部分の配管から水が漏れ、下の部屋の家財をぬらした

こうした賠償に備えるのが、施設賠償責任保険です

建物の火災保険に特約として付けられることが多いです。補償の範囲は保険会社で違うので、「共用部分の配管からの水漏れが入るか」を必ず聞いてください。

6. ケーススタディ:8戸のアパートを相続したAさん

※説明のための仮の例です。

Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。親が入っていた火災保険の証券を見ると、次のとおりでした。

親の契約で気になった点
項目親の契約気になった点
契約者・被保険者亡くなった親相続人に変える手続きが要る
建物の保険金額3,000万円(時価)建て直しには足りない
地震保険なし―
施設賠償なし外階段が古い
入居者の保険8戸中2戸が更新時に切れたまま確かめていなかった

Aさんは、保険会社に再調達価額の見積もりを頼みました。建物の再調達価額は8,000万円と出ました(説明のための仮の数字)。地震保険を付けると、保険金額は2,400万〜4,000万円の範囲です。Aさんは上限の50%で考え、払われる額を確かめました。

払われる額(保険金額4,000万円の場合)
全損4,000万円
大半損2,400万円
小半損1,200万円
一部損200万円

※いずれも、時価に対する割合が上限です。

明るい昼間のアパートの外階段で、作業着の職人の男性が手すりを点検し、そばで40代の女性の大家さんがうなずいて見ている場面。

Aさんは、次の4つを決めました。

  1. 1契約者を変える保険会社に連絡し、自分に変える手続きをする
  2. 2入り直す建物は再調達価額8,000万円で。地震保険と施設賠償を付ける
  3. 3外階段を補修保険に頼らず、さびの点検と補修を先にする
  4. 4加入をお願い保険の切れていた2戸の入居者に手紙を出す

「保険は備え、補修は予防」

保険料は上がりました。でも、建物の不具合による事故は、保険があっても大家さんの責任が消えるわけではありません。Aさんは「保険は備え、補修は予防」と分けて考えることにしました。

建物の見回りや、法律で決まった点検を1年の予定にまとめる方法は、賃貸物件の法定点検|年間の予定表で説明しています。

7. 保険を見直す時期

保険は、入ったら終わりではありません。次の時期に見直してください。

見直す4つの時期

相続したとき

契約者・被保険者の変更。保険金額が再調達価額になっているか

更新のとき

保険料と補償の範囲。不要な特約、足りない特約

大きな修繕をしたとき

建物の値打ちが変わっていないか(修繕の時期はアパートの大規模修繕)

入居者の入れ替わりのとき

新しい入居者の家財の保険・借家人賠償の加入

火災保険の契約期間は、今は最長5年が一般的です

保険料の目安を出す団体(損害保険料率算出機構)が2021年に、使える期間を最長10年から最長5年に縮めると決めました。各保険会社では、2022年10月ごろからの契約で、最長5年になっています。長い契約で入っていた頃と比べて、見直しの機会が増えています。くわしくは保険会社にご確認ください。

よくあるご質問

Q. 火災保険料は経費になりますか?

賃貸の建物の火災保険料は、不動産所得の必要経費になります。何年分かをまとめて払ったときの扱いは、税理士の先生に確かめてください。経費の考え方は賃貸の経費になるもの・ならないもので説明しています。

Q. 水害の補償も付けるべきですか?

物件の場所によります。市区町村のハザードマップで、浸水が想定される場所かを確かめてから決めてください。

Q. 入居者が保険に入ってくれません。

契約書に加入の約束があれば、それを示してお願いします。新しく貸すときは、加入を入居の条件にしてください。

Q. 管理会社に保険のことを任せられますか?

入居者の保険の確認は、管理の仕事に含まれることが多いです。建物の保険をどう入るかは、大家さんが決めます。

賃貸の建物の保険は、大家さんが入るものと、入居者に入ってもらうものに分けて考えます。建物は建て直せる金額で入り、施設賠償を付け、入居者の加入も確かめる。相続したら、まず証券を出して、契約者と保険金額を見直してください。

出典:財務省「地震保険制度の概要」(PDF)、財務省「地震保険制度の概要」、地震保険に関する法律施行令 第2条(e-Gov法令検索)、日本損害保険協会「備えて安心 地震保険の話」(PDF)、総務省消防庁「火災保険加入の際の注意点(2)」、総務省消防庁「火災保険加入の際の注意点(5)」、民法 第717条(e-Gov法令検索)、失火ノ責任ニ関スル法律(e-Gov法令検索)、損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」(2021年)

その他のテーマは不動産コラムにまとめています。

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