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利回りの見方|表面と実質。相続したアパートの「稼ぐ力」を測る物差し

公開日

夕方の居間で、年配の女性の大家さんと息子がローテーブルをはさみ、息子が電卓を打ち、母がノートに書きとめている場面。

アパートを相続すると、「このアパートはもうかっているのか」が気になります。売却の話が来たときにも、「利回り○%」という言葉が出てきます。利回りは、物件の値段に対して、1年にいくら稼ぐかを割合で表したものです。ただ、同じ「利回り」でも、計算の仕方で数字が大きく変わります(下の例では3割以上)。

このページは、物件を買うすすめではありません。相続したアパートの稼ぐ力を測り、持ち続けるか、手を入れるか、売るかを考えるときの物差しとして説明します。

このページのポイント

  • 表面利回りは「満室の年間家賃÷値段」。空室も経費も入っていません。
  • 実質利回りは「(入る家賃−経費)÷値段」。修繕のための積み立てまで入れると、実態に近くなります。
  • 相続したアパートでは、値段に「今売ったらいくらか」を使います。親が建てた代金ではありません。

1. 2つの利回りの計算式

2つの利回りは、割る前の数字が違います

表面利回り

満室のときの1年の家賃 ÷ 物件の値段

実質利回り

(1年に実際に入る家賃 − 1年の経費)÷ 物件の値段

違いを表にしました。

表面利回り実質利回り
家賃満室を前提空室の分を引いた、実際に入る額
経費引かない管理料・税金・保険・修繕などを引く
何に使うか物件どうしをざっと比べる自分の物件の本当の稼ぐ力を見る

広告の利回りは「どの家賃で計算しているか」を確かめる

売り出しの広告で目にする利回りは、多くが表面利回りです。空室の多い物件でも、満室の家賃で計算していることがあります。

2. 実質利回りで引く経費

実質利回りでは、次の経費を引きます。

引く経費中身
管理料管理会社に払う額
固定資産税・都市計画税土地と建物の分
火災保険料1年分にならした額
共用部の清掃・点検清掃、消防設備の点検など
日々の修繕退去後の補修、小さな故障
大きな修繕のための取り分け外壁・屋根・給湯器などの交換にそなえる額
次の2つは、引きません

借入れの返済

借り方によって変わるので、物件の稼ぐ力とは分けて考える

減価償却費

お金が出ていかない経費なので、利回りの計算には入れない(税金の計算では使う。減価償却とはで説明)

いちばん忘れやすいのが「大きな修繕のための取り分け」

これを入れないと、実質利回りが高く見えすぎます。

3. 相続したアパートの「値段」は何を使うか

買った物件なら、値段は買った代金です。では、相続したアパートは何で割ればよいでしょうか。

相続したアパートは「今売ったらいくらか」で割ります

使わない

親が建てた代金・相続税の評価額

使う

今売ったらいくらか

売れば手に入るお金に対して、持ち続けると1年にいくら稼ぐか

理由は、今アパートを持ち続けることは、「売って現金にする」ことをしない選択だからです。売れば手に入るお金に対して、持ち続けると1年にいくら稼ぐか。これが、持ち続けるかどうかを考えるときの物差しになります。

「今売ったらいくらか」の調べ方

不動産会社に査定を頼むと目安が分かります。1社だけでなく、2〜3社に頼み、根拠も聞いてください。

4. ケーススタディ:8戸のアパートを相続したAさん

(説明のための仮の例です)Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。不動産会社の査定では、今売ると7,000万円が目安と言われました。去年1年の数字(空室は延べ4か月分)と、大規模修繕の10年計画をもとにした取り分け(ここでは年80万円と仮に置きます)から、計算しました。

① 表面利回り

項目計算金額
満室の1年の家賃65,000円×8戸×12か月6,240,000円
表面利回り6,240,000÷70,000,000約8.9%

② 実質利回り

項目金額
実際に入った家賃(96か月−空室4か月=92か月分)5,980,000円
管理料(入った家賃の5.5%)−328,900円
固定資産税・都市計画税−380,000円
火災保険料−60,000円
共用部の清掃・点検−150,000円
日々の修繕−250,000円
大きな修繕のための取り分け−800,000円
残る額(1年)4,011,100円
実質利回り(4,011,100÷70,000,000)約5.7%

※管理料・保険料・清掃・点検・修繕・取り分けの金額は、説明のための仮の数字で、実際の値段ではありません。自分の物件では、契約書・保険証券・見積もりの額に置き換えてください。更新料は年によって変わるので入れていません。

計算の仕方で、利回りは大きく変わります

8.9%

表面利回り

6.9%

実質(取り分けを入れない)

5.7%

実質(取り分けを入れる)

※取り分けを入れなければ、残る額は4,811,100円で、実質利回りは約6.9%です。表面と実質では3ポイント以上、取り分けを入れるかどうかだけで1ポイント以上変わります。

確定申告の「差し引き」と数字が違う理由

大家の確定申告|不動産所得の計算で計算した同じAさんの「差し引き」4,075,100円とは、数字が違います。

  • 確定申告は税金のための計算で、更新料130,000円を収入に入れ、減価償却費736,000円・税理士の先生への報酬100,000円・交通費など30,000円を経費に入れます。
  • 利回りは物件の稼ぐ力を見るための計算なので、更新料と、お金の出ていかない減価償却費、物件そのものと関係の薄い報酬・交通費は入れず、代わりに大きな修繕のための取り分け800,000円を入れています。

4,075,100−130,000+736,000+100,000+30,000−800,000=4,011,100円で、2つの計算はつながっています。

③ 空室が増えたら、どう変わるか

空室の月数を変えて、実質利回りを計算し直しました。管理料は入った家賃の5.5%、それ以外の経費は1,640,000円で同じとしています。

1年の空室(延べ)入る家賃残る額実質利回り
2か月6,110,000円4,133,950円約5.9%
4か月5,980,000円4,011,100円約5.7%
8か月5,720,000円3,765,400円約5.4%
12か月5,460,000円3,519,700円約5.0%
空室が延べ4か月から12か月に増えると、実質利回りは0.7ポイント下がります
空室2か月約5.9%
空室4か月約5.7%
空室8か月約5.4%
空室12か月約5.0%

※棒の長さは、空室2か月の実質利回りを100とした割合です。

Aさんは、空室を減らすことの重さを、数字で確かめられました。

入居者から家賃の値下げを求められたときに、1年あたりの手取りで比べる方法は、家賃の値下げを求められたときで説明しています。

④ 買う人は、どう見るか

物件を買う人は、ふつう、実質で何%ほしいかを考えて、値段を逆算します。Aさんの残る額4,011,100円で計算すると、次のようになります。

買う人が求める実質利回り逆算した値段(4,011,100÷利回り)
5.0%約8,020万円
5.5%約7,290万円
6.0%約6,690万円

求める利回りが1ポイント違うと、値段は1,300万円ほど変わります

実際に求められる利回りは、場所、築年数、建物の状態、そのときの金利で変わります。この表は、査定の根拠を聞くときに「何%で計算していますか」と尋ねるための物差しです。売ることや、物件を買うことをすすめるものではありません。

Aさんは、この計算をもとに、次のように考えを整理しました。

  1. 1持ち続けるなら空室を減らすことと、大規模修繕を計画どおり行うことが、稼ぐ力を保つ柱になる
  2. 2売るかどうかは売ったときにかかる仲介手数料や税金を引いた手取りで比べる。その計算は税理士の先生に頼む
  3. 3相続人の間で話すときは表面利回りではなく、実質利回りの表を見せる
ダイニングテーブルを囲む母と兄妹の家族3人が、広げた資料を前に、兄の説明を穏やかに聞いている話し合いの場面。

5. 利回りだけで決めないこと

利回りは便利な物差しですが、これだけでは決められないこともあります。

利回りに表れないこと考える所
建物の残りの寿命あと何年貸せるか。建て替えや取り壊しの時期
相続人の事情だれが管理するか。共有で持ち続けられるか
相続税・売ったときの税金持ち続ける・売るで、かかる税金が変わる
借入れ返済の後に手元に残るお金

税金がからむ判断は、税理士の先生に確かめてください

アパートの相続税は貸家建付地とは|貸している家は相続税の評価が下がる理由、相続したアパートの進め方は相続した賃貸アパート|入居者がいるまま売るか、持ち続けるかで説明しています。物件を買い足す考え方は、このページでは扱いません。別のページ相続対策の不動産投資で説明しています。

よくあるご質問

Q. 実質利回りは、何%あればよいですか?

決まった基準はありません。場所や築年数、金利で変わります。自分の物件の数字を、毎年同じ計算で出して、上がっているか下がっているかを見るのが、いちばん役に立つ使い方です。

Q. 「ネット利回り」「NOI利回り」という言葉を聞きました。

どちらも、経費を引いた後の額で計算する利回りのことで、このページの実質利回りに近いものです。ただ、どの経費を引くかは人によって違うので、計算の中身を確かめてください。

Q. 相続税の評価額で割ってはいけないのですか?

相続税の評価額は、税金の計算のための額で、売れる値段とは違います。持ち続けるかを考える物差しには、今売ったらいくらかを使ってください。

Q. 借入れの返済を引いた数字も見たいです。

残る額から1年の返済額を引いた「手元に残るお金」も、別に計算してください。利回りとは分けて見ると、物件の稼ぐ力と、借り方の影響を分けて考えられます。

表面利回りは満室の家賃で割った数字、実質利回りは空室と経費を引いて割った数字です。相続したアパートでは、「今売ったらいくらか」で割り、大きな修繕のための取り分けまで経費に入れてください。毎年同じ計算で出すと、稼ぐ力の変化が見えます。売るか持ち続けるかの最後の判断は、税金も含めて、税理士の先生と確かめましょう。

出典:国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」、国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」

その他のテーマは不動産コラムにまとめています。

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