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アパートの外壁や屋根は、毎日少しずつ傷んでいきます。傷みは目立たないまま進み、雨もりが起きてから気づくと、直す範囲が広がります。大規模修繕とは、外壁の塗り替えや屋根・防水の工事のように、建物全体にかかわる大きな修繕のことです。1回の出費が大きくなります。
相続したアパートでは、前回いつ工事をしたのか分からないことも多いです。このページでは、時期の目安、工事の組み方、10年の計画とお金の取り分け方を、順に説明します。
このページのポイント
- 外壁の塗装は11〜18年目、屋根の塗装は11〜15年目、鉄部の塗装は4〜10年目が国の資料の目安。ただし建物の状態で決めます。
- 外壁・屋根・鉄部は、足場を1回で済むようにまとめて行うと、足場代を何度も払わずに済みます。
- 10年分の工事を表にして合計し、手元のお金との差を、毎月の取り分けで埋めます。
このページの内容
1. 部位ごとの時期の目安
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」は、賃貸住宅の修繕の時期の目安を次のように示しています。
| 部位 | 工事 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 屋根 | 塗装・補修 | 11〜15年目 |
| 屋根 | 防水・ふき替え | 21〜25年目 |
| 外壁 | 塗装 | 11〜18年目 |
| 外壁 | タイル張りの補修 | 12〜18年目 |
| 階段・廊下(鉄部) | 塗装 | 4〜10年目 |
| 階段・廊下 | 塗装・防水 | 11〜18年目 |
| 給排水管 | 高圧洗浄 | 5年目 |
| 給排水管 | 取り替え | 30年目 |
| 給湯器・エアコン | 交換 | 11〜15年目 |
表は「修繕を行う時期」の目安です
ガイドブックも、時期は建て方や材料、場所によって違うとしています。実際の工事の時期は、点検の結果で決めます。
2. 自分でできる点検:5つの場所を見る
ガイドブックが挙げている「傷みのサイン」をもとに、大家さんが年に1回、自分の目で見る場所をまとめました。台風や大きな地震の後にも見てください。
| 場所 | 見るところ | 工事を考えるサイン |
|---|---|---|
| 屋根 | 割れ・ずれ・色あせ | 色あせが全体に広がっている。割れやずれがある |
| 外壁 | ひび、つなぎ目のゴム(シーリング)の傷み | 手でさわると白い粉がつく。つなぎ目が切れている、すき間がある |
| 雨どい | 割れ、つなぎ目の外れ | 雨の日にあふれている、たれている |
| 外階段・廊下 | 鉄部のさび、床の割れ、水はけ | さびが広がり、穴や手すりのぐらつきがある |
| 給湯器など | 故障の回数 | 同じ時期に入れた物の故障が続いている |
高い所には上らないでください
屋根は、地上から双眼鏡で見るか、点検を工事会社に頼みます。写真を撮り、日付を付けて残しておくと、次の年に比べられます。
3. 工事は「足場を1回で」まとめる
外壁や屋根の工事には、建物のまわりに組む足場が要ります。足場代は、工事の中身に関係なく、組むたびにかかります。だから、足場を使う工事は、なるべく同じ時に行います。
- 外壁の塗装とつなぎ目のゴムの打ち替え
- 屋根の塗装
- 外階段・廊下の鉄部の塗装と、廊下の床の防水
- 雨どいの補修
まとめるかどうかは、点検の結果と見比べて
時期の目安がずれていても、数年の差なら、まとめた方が合計は安くなりやすいです。逆に、まだ傷んでいない所を早めに直すことにもなるので、点検の結果と見比べて決めます。
4. 見積もりは「数量」と「材料」で比べる
見積もりは、2社以上からとります。合計の金額だけで比べると、中身の違いが分かりません。次の4つをそろえて比べてください。
| 比べる所 | 確かめること |
|---|---|
| 数量 | 外壁の面積(㎡)、つなぎ目の長さ(m)が、各社でほぼ同じか |
| 材料 | 塗料の種類。種類で、次の塗り替えまでの年数の目安が変わる |
| 工程 | 下地の補修、下塗り・中塗り・上塗りの回数が書いてあるか |
| 保証 | 何年、どの部分を保証するか。書面で出るか |
数量が大きく違うときは要注意
どちらかが現地をよく見ていない可能性があります。「一式」としか書いていない項目は、中身を書き出してもらってください。
5. ケーススタディ:築18年のアパートを相続したAさん
※説明のための仮の例です。
Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。父が2008年に建て、今年で築18年です。父の書類を探しましたが、外壁や屋根を工事した記録は見つかりませんでした。新築から一度も大きな工事をしていない、と考えて進めます。
点検を工事会社2社に頼んだところ、外壁のつなぎ目のゴムが切れ、外階段の手すりにさびが広がっていました。屋根は色あせが進んでいるものの、割れはありません。Aさんは、足場を1回で済むように、2027年の春に一体で行う見積もりをとりました。
| 工事 | 見積もりで確かめたこと |
|---|---|
| 足場 | 建物の周りの長さと高さ。網のシートが入っているか |
| 外壁の塗装・つなぎ目のゴムの打ち替え | 塗る面積(㎡)、塗料の名前、何回塗るか |
| 屋根の塗装 | 屋根の面積、下地の補修が入っているか |
| 外階段・廊下の鉄部の塗装と床の防水 | さび落としの方法、防水の材料 |
| 雨どいの補修 | 直す長さ |
| 諸経費 | 中身の書き出し |
屋根だけ5年後に別に行うと
足場をもう一度組むので、足場代が二重にかかります。
今後10年(2027〜2036年)の工事の表
2027年春
外壁・屋根・鉄部などの一体工事(金額:上の見積もり)
2028〜2032年
給湯器8台を順に交換(金額:給湯器の見積もり×8台)
2028年・2033年
排水管の高圧洗浄(金額:見積もり×2回)
2032年ごろ
外階段・廊下の鉄部の再塗装(金額:見積もり)
2036年ごろ
屋根・防水の点検と補修(金額:点検のときの見積もり)
※合計は「10年の見積もりの合計」。まだ先の工事は、今の見積もりで仮に置き、5年後に見直します。
毎月いくら取り分けるか
相続のときにアパート用として分けたお金が、300万円あります。取り分ける額は、次の式で出します。
取り分けの式
1か月の取り分け=(10年の見積もりの合計−手元の300万円)÷120か月
1戸あたり=1か月の取り分け÷8戸。これを家賃6.5万円と比べると、家賃のどのくらいを修繕に回すかが分かります。
| 10年の合計と、手元の300万円との差 | 1か月の取り分け(÷120か月) | 1戸あたり(÷8戸) | 家賃6.5万円に対して |
|---|---|---|---|
| 120万円 | 10,000円 | 1,250円 | 約1.9% |
| 360万円 | 30,000円 | 3,750円 | 約5.8% |
| 600万円 | 50,000円 | 6,250円 | 約9.6% |
※式の使い方を示すための仮の数字で、工事の費用の目安ではありません。Aさんは、自分の見積もりの合計を入れて計算します。
最初の工事で、一度に大きなお金が要ります
最初の2027年春に、一体工事の見積もりの額が一度に要ります。Aさんの見積もりは、手元の300万円を上回りました。差は、半年では取り分けきれません。Aさんは、工事会社と時期を話し、次の2つから選ぶことにしました。
1. 1年遅らせる
一体工事を2028年春に1年遅らせ、その間に取り分ける(つなぎ目のゴムの切れた所だけ、先に部分的に直す)
2. 予定どおり行う
予定どおり2027年春に行い、不足分は金融機関に相談する
※どちらがよいかは、傷みの進み方と、借入れの条件で決まります。Aさんは、つなぎ目のゴムの切れから雨水が入るおそれを工事会社に聞いたうえで決めることにしました。

6. 入居者への知らせ方
工事の間、入居者の暮らしに影響が出ます。工事の1か月前までに、書面で知らせてください。
| 知らせること | 例 |
|---|---|
| 工事の期間 | 足場を組む日から外す日まで |
| 暮らしへの影響 | ベランダに物を置けない、洗濯物を外に干せない日、窓を開けにくい日、塗料のにおい |
| 安全のこと | 足場があるので、窓の鍵を閉める |
| 問い合わせ先 | 工事会社の担当者の名前と連絡先 |
募集の多い時期を避けるのも一つの方法
入居者が入れ替わる時期(1〜3月)に足場が立っていると、内見の印象が悪くなることがあります。
7. 分譲マンションの「長期修繕計画」の考え方を借りる
国土交通省は、分譲マンション向けに「長期修繕計画作成ガイドライン」を出しています。
30年以上
計画の期間
2回
含める大規模修繕の回数
5年程度
ごとに見直す
アパートは分譲マンションと仕組みが違いますが、「先の工事を表にし、数年ごとに見直す」考え方は、そのまま使えます。上のAさんの10年の表も、5年後に点検の結果で見直します。
消防設備・受水槽・建物の定期報告など、法律で決まった点検の予定は、賃貸物件の法定点検で説明しています。
大きな工事の後は、建物の火災保険の金額が今の建物に合っているかも見直します。賃貸物件の火災保険と施設賠償をご覧ください。
よくあるご質問
Q. 外壁の工事は、その年の経費になりますか?
元の状態に戻す工事なら修繕費、性能を上げる部分があれば資本的支出として何年かに分けて経費にする、と扱いが分かれます。工事の前に、見積書を税理士の先生に見てもらってください。物差しは賃貸の経費になるもの・ならないもので説明しています。
Q. 父がいつ工事をしたか分かりません。
父の申告書の修繕費の欄、通帳の大きな出金、工事会社の名前の入った書類を探してください。見つからなければ、点検の結果から今の状態で判断します。次の代が同じことで困らないよう、工事の記録を物件ファイルにとじる方法は貸している家を子に引き継ぐ前にで説明しています。
Q. 工事中も家賃は満額もらえますか?
ふつうは家賃を下げずに行います。ただ、長い期間ベランダが使えないなど影響が大きいときは、入居者と話し合うことがあります。
Q. 修繕の計画は、売るときにも役に立ちますか?
工事の記録と計画は、買う人が建物の状態を判断する材料になります。書類はまとめて残しておきましょう。物件の稼ぐ力の見方は利回りの見方|表面と実質で説明しています。
Q. 工事にいくらかかるか、目安はありますか?
建物の広さ、材料、足場の組みやすさで大きく変わるため、このページでは金額の目安を載せていません。2社以上から見積もりをとり、4.の表のとおり数量と材料をそろえて比べてください。
大規模修繕は、時期の目安を知り、自分の目で点検し、足場を1回で済むようにまとめて行います。見積もりは数量と材料で比べてください。そして10年分の工事を表にし、手元のお金との差を毎月の取り分けで埋めます。数年ごとに見直せば、急な出費にあわてずに済みます。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」、国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」、国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月7日改訂)、国土交通省「マンション管理について(ガイドライン等)」、国土交通省 報道発表「長期修繕計画作成ガイドライン等の見直し」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。