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「ごみ置き場が散らかっている」。「駐輪場に、見たことのない自転車が置きっぱなし」。「廊下の電気が切れたまま」。大家さんには、入居者からいろいろな苦情が届きます。1件ずつ対応して終わりにすると、同じ苦情が何度も来ます。話がこじれたときも、「いつ、何をしたか」を説明できません。
このページでは、苦情の記録に絞って、そのまま使えるひな形と、1年に1回の見直し方をまとめます。音の苦情の受け止め方と、注意の進め方は、騒音トラブルへの大家の対応で扱っています。
このページのポイント
- 記録は1件1枚。「いつ・だれから・何を・どうした・どう終わったか」を同じ形で残します。
- 事実と気持ちを分けて、そのつど書きます。消さずに書き足します。入居者の名前が入るので、鍵のかかる所に保管します。
- 1年に1回、記録を1枚の表にまとめて見直します。管理会社に任せていても、苦情の報告を受け取って同じ表に入れます。
このページの内容
1. 記録が役に立つ3つの場面
苦情を言った人に、結果を伝えるとき
「〇日に確かめ、〇日に全戸へお願いしました」と、したことを具体的に伝えられる
話がこじれて、管理会社や弁護士の先生に相談するとき
記録がそのまま経過の説明になる
1年に1回、物件を見直すとき
同じ場所・同じ種類の苦情が見え、元から手を打てる
苦情への対応は、だいたい次の流れになります。
| 段階 | すること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 受け付ける | ひな形に沿って書きとめ、「確かめて、〇日までにご連絡します」と伝える | その日のうち |
| 確かめる | 現場を見る。写真を撮る。日を変えて2〜3回見る | 3日以内に1回目 |
| 手を打ち、知らせる | 直す話は業者を手配。入居者どうしの話は全戸への知らせから。苦情を言った人に結果を伝える | 1〜2週間 |
| 終える・続ける | 1か月ほど様子を見て、終わりか、次の手かを決める | 1か月ほど |
苦情を言った人の名前は、相手に伝えないのが基本です
入居者どうしの話のときです。全戸への知らせの書き方や、個別に注意するときの進め方は、騒音の例で騒音トラブルへの大家の対応にまとめています。水漏れなど急ぎの話は、雨漏り・水漏れで入居者に損害が出たときで説明しています。
2. 記録のひな形(1件1枚)
次の表を、紙かパソコンの表計算に写して使ってください。1件ごとに1枚にし、受け付けた順に番号を振ります。
| 項目 | 書き方 | 記入例 |
|---|---|---|
| 番号 | 年と通し番号 | 2026-04 |
| 受け付けた日時 | 年月日・時刻 | 2026年4月6日(月)19時10分 |
| 受け付け方 | 電話・メール・手紙・直接 | 電話 |
| 申し出た人 | 部屋番号と名前(手元の控えだけ) | 201号室 〇〇様 |
| 種類 | 大家さんが直す話・入居者どうしの話・急ぎの話 | 入居者どうし |
| 申し出の中身 | 本人の言葉に近い形で、事実と希望を分けて | 事実:ごみ置き場に収集日以外のごみが出ている。カラスが散らかす。希望:張り紙をしてほしい |
| 伝えた期限 | いつまでに何を連絡すると言ったか | 4月9日までに、確かめた結果を電話する |
| 確かめたこと | 日付・時刻・見たこと・写真の有無 | 4月7日朝:袋2つ。4月8日朝:袋1つ。写真あり |
| したこと | 日付と中身 | 4月9日:全戸に手紙を配布。4月10日:ごみ置き場にネットを追加 |
| 申し出た人への報告 | 日付と方法と中身 | 4月9日 電話:全戸に手紙を配ったこと、ネットを足すことを伝えた |
| その後の様子 | 1週間後・1か月後 | 4月16日:収集日以外のごみなし。5月7日:なし |
| 終わった日・状態 | 終わり・続ける・相談中 | 5月7日 終わり |
| 費用 | 修理代など | ネットの代金(領収書の額) |
| メモ | 次に生かすこと | 新しい入居者に、ごみの日の案内を入居時に渡す |
3. 書くときの決まり
| 決まり | 理由 | 例 |
|---|---|---|
| 事実と、気持ちや推測を分ける | あとで読んだ人が、何が確かなのかを分けられる | ×「202号室の人がだらしない」 ○「4月7日朝、ごみ置き場に袋2つ。出した人は分からない」 |
| 日付と時刻は、そのつど書く | あとからまとめて書くと、順番や日にちがずれる | 電話を切ったらすぐ書く |
| 消さずに書き足す | 書き直した跡が残っていると、記録が信用される | 直すときは線を引き、日付を添える |
| 申し出た人の言葉は、なるべくそのまま | 大家さんの言い換えで、意味が変わることがある | 「毎朝カラスが散らかしている」 |
| 写真は番号と日付で結びつける | どの件の写真か、後で分からなくなる | 「2026-04_0407_1.jpg」 |
4. 記録の保管と、見せる範囲
記録には、入居者の名前や部屋番号が入ります。
数が少なくても「個人情報取扱事業者」に当たります
賃貸の事業として入居者の情報をまとめて扱う大家さんは、数が少なくても、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」に当たります。扱う人数で外れる決まりは、平成29年5月30日になくなりました。情報がもれたり、なくなったりしないよう、保管に気を配る必要があります。
| 決めておくこと | 目安 |
|---|---|
| 置き場所 | 紙は鍵のかかる引き出し。パソコンのファイルはパスワードを付ける |
| 見せる範囲 | 入居者に見せるのは、全戸への知らせなど名前の出ない物だけ。ひな形そのものは見せない |
| 残す期間 | 法律で決まった年数はない。入居者が退去してからも、数年は残しておくと安心 |
| 捨て方 | 紙はシュレッダー。ファイルは消したことを確かめる |
5. 管理会社との分担
管理会社に任せている場合、苦情の受け付けと記録は、管理会社がすることが多いです。
管理会社からは、少なくとも1年に1回、報告書が届きます
国に登録した賃貸住宅管理業者は、少なくとも1年に1回、管理業務の報告書を大家さんに渡して説明する決まりがあります。その報告書には、「入居者からの苦情の発生状況と対応状況」を書くことになっています。
| 分担を決める所 | 決めておくこと |
|---|---|
| 受け付けと記録 | 管理会社がする。記録の項目が上のひな形と同じくらいそろっているか |
| 大家さんへの報告 | 急ぎの話はすぐ。それ以外は毎月まとめて、など。年1回の報告書だけで足りるか |
| 大家さんが決めること | 修理の発注、費用のかかる対策、個別の注意の書面 |
| 記録の受け渡し | 管理会社を変えるときや契約が終わるときに、それまでの記録をもらえるか |
報告を受け取ったら、ひな形の項目と見比べて、足りない所を聞いてください。大家さんの手元でも、受け取った報告を下の「1年分の表」に入れておくと、管理会社を変えても記録が途切れません。
管理会社に任せる仕事の範囲は、管理委託料の相場と、含まれる仕事で説明しています。
6. ケーススタディ:Aさんが1年分の苦情を見直した
※人物・数字は説明のための仮の例です。
Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。相続してから1年で、苦情が7件ありました。ひな形に沿って記録していたので、1年分を1枚の表にまとめられました。
| 番号 | 中身 | 種類 | 受け付けから最初の連絡まで | 終わるまで |
|---|---|---|---|---|
| 01 | 共用廊下の電気が切れている | 直す話 | 当日 | 2日 |
| 02 | 駐輪場に持ち主の分からない自転車 | 入居者どうし | 当日 | 45日 |
| 03 | 洗濯機置き場の排水のにおい | 直す話 | 翌日 | 7日 |
| 04 | ごみ置き場の散らかり(ひな形の記入例の件) | 入居者どうし | 当日 | 31日 |
| 05 | 郵便受けにチラシがあふれている部屋がある | 入居者どうし | 当日 | 14日 |
| 06 | 階段の手すりのぐらつき | 直す話 | 当日 | 10日 |
| 07 | ごみ置き場の散らかり(2回目) | 入居者どうし | 当日 | 続けて様子を見ている |
※件数・中身・日数は、説明のための仮の例です。
表にして、Aさんは次のことに気づきました。
気づいたこと
7件のうち2件が、ごみ置き場の話
決めたこと
ネットと、ごみの日の案内を付ける
ごみの日の案内は絵だけで分かる形に。入居時にも渡します。
気づいたこと
自転車の話は、終わるまで45日かかった
決めたこと
部屋番号のシールを配る
貼っていない自転車には、一定の期間を置いて知らせる手順を決めます。
気づいたこと
直す話は、どれも10日以内に終わった
決めたこと
このやり方を続ける
手すり・電気は、年2回の見回りで先に見つけます。
自転車の件の進め方
Aさんは、持ち主の分からない自転車に、すぐに手を付けませんでした。
- 1全戸に手紙「〇月〇日までに部屋番号のシールを貼ってください」
- 2写真と張り紙期限を過ぎても貼られていない1台は、写真を撮り、張り紙で知らせる
- 3警察に相談そのあとで相談した
持ち主の分からない物を、勝手に処分しない
あとでもめることがあるからです。この経過も、記録にそのまま残しました。
2年目、Aさんはこの1年分の表を、見回りの日の前に見返すようにしました。苦情が来る前に、同じ所を先に見られるからです。

よくあるご質問
Q. 同じ人から、何度も苦情が来ます。
1件ずつ記録し、事実を確かめた結果を、そのつど伝えます。確かめても事実が見つからないときは、「確かめたこと」と「見つからなかったこと」をそのまま記録し、そのまま伝えます。続くときは、記録を持って管理会社や弁護士の先生に相談してください。
Q. 電話の内容を録音してもよいですか?
聞き違いを防ぐために録音するなら、はじめに「記録のため録音します」と伝えておくと、もめごとになりにくくなります。録音しても、ひな形には要点を書いておきます。
Q. 記録は、紙とパソコンのどちらがよいですか?
どちらでも構いません。続けやすい方を選んでください。1年分の表を作るなら、パソコンの表計算の方が並べ替えや数えるのが楽です。
Q. 入居者の話し方が強く、怖いと感じることがあります。
一人で会わず、電話は書面やメールに切り替えてもらってください。身の危険を感じたら、ためらわず警察に相談します。記録は、こういうときこそ役に立ちます。
苦情は、記録の残し方で、その後の進み方が変わります。1件1枚のひな形で、事実と気持ちを分けて、そのつど書いてください。1年に1回、1枚の表にまとめて見直せば、同じ苦情を元から減らす手が打てます。
出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q1-50/賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第20条(e-Gov法令検索)/賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則 第40条(e-Gov法令検索)/国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)」
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