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アパートをペット可にするか|大家が決める条件と、退去時の費用の考え方

公開日

アパートの前の小道で、若い夫婦がリードをつけた小型犬と一緒に、60代の男性の大家さんと立ち話をしている場面。

ペットと暮らせる部屋を探している人は、少なくありません。一方で、ペット可の部屋は今も多くはありません。そのため、ペット可にすると、探している人の目に止まりやすくなることがあります。

ただし、条件を決めずに始めると、退去のときの費用や、他の入居者との関係で困ります。このページでは、ペット可にするか決める考え方と、決めておく条件をまとめます。

このページのポイント

  • 国の標準契約書では、犬や猫を飼うには大家さんの「書面の承諾」が要る形です。条件をつけて承諾できます。
  • 決めておくのは「種類・大きさ・頭数・届け出・共用部のルール・退去時の費用」。書面に残します。
  • 体の不自由な方の補助犬は、ペットとは別。住宅でも拒まないよう努める決まりがあります。

1. ペットの扱いは「書面の承諾」で決める

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」では、動物の扱いが3つに分かれています。

犬や猫は「書面の承諾」があれば飼える形です

禁止

猛獣、毒蛇など、明らかに近所に迷惑をかける動物。飼ってはいけない(別表第1 五)

書面の承諾が要る

犬、猫など。大家さんの書面の承諾があれば飼える(別表第2 三)

承諾が要らない

観賞用の小鳥や魚など、明らかに迷惑をかけるおそれのない動物。書面の承諾は要らない

「ペット可」=「条件を満たせば、書面で承諾する」

こう考えるのが分かりやすいです。1匹ずつ、どんな動物かを聞いてから承諾できます。

今の入居者への一言を忘れずに

すでに住んでいる入居者の契約が「ペット不可」のままなら、その人たちの契約は変わりません。ただ、同じ建物に動物が来ることになります。アレルギーのある人がいないかなど、今の入居者への一言のお知らせがあると、あとの苦情が減ります。

2. 決めておく条件

環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」でも、集合住宅で飼育を認める場合は、種類・大きさ・頭数などの条件をはっきりさせるよう書かれています。次の表を、条件づくりのひな形に使ってください。

決めておく7つの項目
項目決め方の例なぜ決めるか
種類小型犬と猫のみ大きな犬は足音や鳴き声が響きやすい
大きさ成犬で体重10kg以内など建物の広さ・造りに合わせる
頭数1部屋1匹まで(2匹まで、なども)においや傷が増えるのを防ぐ
届け出写真・種類・年齢を届け出る。犬は市区町村への登録と年1回の狂犬病予防注射を確かめる登録と注射は法律で飼い主の義務
共用部のルール廊下や階段では抱っこかリード。共用部でブラッシングしない他の入居者とのトラブルを防ぐ
退去時の費用消臭・クリーニングの扱いを特約で決める退去のときにもめない
お金の条件家賃・敷金を上乗せするか退去時の費用に備える

犬の登録と予防注射は、飼い主の義務です(狂犬病予防法)

  • 登録:犬を飼い始めてから30日以内(生後90日以内の犬は、90日を過ぎてから30日以内)
  • 予防注射:毎年1回

入居のときに、登録の証明と注射の済み票を見せてもらうとよいでしょう。

3. 承諾書に書くこと

条件を決めたら、飼い始める前に「ペット飼育の承諾書」を交わします。書いておくとよいのは、次の項目です。

  • 飼う動物の種類・名前・年齢・体重(写真を添える)
  • 守ってもらうルール(共用部ではリードか抱っこ、鳴き声・においへの配慮など)
  • 動物を増やす・替えるときは、前もって届け出て、改めて承諾を受けること
  • ルールが守られないときは、承諾を取り消すことがあること
  • 退去時の消臭・クリーニングの扱い(契約書の特約と同じ内容)

申し込みのときに、写真を見せてもらいましょう

大きさや種類の思い違いを防げます。「小型犬」と言っても、人によって思い浮かべる大きさが違うからです。

4. 退去時の費用の考え方

国土交通省の原状回復ガイドラインでは、ペットによって柱やクロス(壁紙)に傷がついたり、においが付いたりした場合は、入居者の負担と判断される場合が多い、としています。ペットを飼うのは、部屋のふつうの使い方とは言いにくいからです。

それでも、古くなった分は差し引きます

「どこまでを、いくら負担するか」は、古くなった分を差し引いて考えます。退去時の費用の分け方は、原状回復のルール|大家が負担するもの・入居者が負担するものでくわしく説明しています。

もめないために、契約のときに決めておく3つ
  1. 1入居時の写真日付つきで残す
  2. 2消臭・クリーニングの特約入居者の負担にするなら、金額の目安まで書き、説明する
  3. 3敷金の上乗せの目的上乗せするなら、何に使うお金かを書いておく

特約の文は、弁護士の先生に見てもらってください

特約が有効かどうかは、中身や説明の仕方で変わります。消費者契約法との関係もあります。

5. 補助犬はペットとは別

盲導犬・介助犬・聴導犬は「身体障害者補助犬」といい、ペットとは扱いが違います。

「ペット不可の物件だから」だけで断らないでください

身体障害者補助犬法では、住宅を管理する人は、住んでいる体の不自由な方が補助犬を使うことを拒まないよう努めなければならない、とされています(第11条)。

障碍のある方への配慮の考え方は、入居審査で大家が見るところでも説明しています。

6. ケーススタディ:8戸のアパートを相続したAさん

(説明のための仮の例です)Aさんの木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)は、2部屋が4か月空いています。ペット可にするか、そのままにするかを、数字で比べました。

前提中身
ペット可にする部屋空いている1階の2部屋だけ
条件小型犬か猫を1匹まで。家賃は月3,000円上乗せ(近くのペット可の部屋と比べて決めた)。敷金を1か月分(6.5万円)上乗せ
退去時に、壁紙の張り替えや消臭に追加でかかるかもしれない費用業者に見積もりを取って確かめる
1部屋あたりで比べました
1部屋あたりペット可にするそのまま
家賃の上乗せ(4年住んだ場合)3,000円×48か月=144,000円なし
空室が1か月早く埋まった場合65,000円なし(空室がもう1か月続けば−65,000円)
増える収入の合計209,000円0円
退去時の追加の費用(最大で見た場合)業者の見積もりの額(入居者が負担する傷の分は、敷金から充てる)なし
敷金の上乗せ(65,000円)預かるお金なので、増える収入には数えない。入居者が負担する分に充て、残りは返すなし
見積もりが209,000円より少なければ、ペット可の方が得です

出ていくかもしれないお金

退去時の追加の費用の見積もり

大家さんが持つ分だけを見る

増える収入

209,000円

上乗せの家賃144,000円+空室が1か月早く埋まった分65,000円

Aさんが取った見積もりは、209,000円を下回りました。空室が早く埋まらなかった場合でも、上乗せの家賃144,000円と見積もりを比べて、得になるかを確かめました。

自分の物件で使う、比べ方の式

「上乗せの家賃(月額×住んでもらう見込みの月数)+早く埋まった月数×家賃」と、「退去時の追加の費用のうち、大家さんが持つ分の見積もり」を比べます。前の方が大きければ、ペット可の方が得です。Aさんは、3,000円×48か月+1か月×65,000円=209,000円と、見積もりの額を比べました。

ペット可の部屋の中で、60代の大家さんが入居予定の女性から猫の写真を見せてもらいながら書類を確かめ、足元に持ち運び用のペットのかごがある場面。

Aさんは、次の理由で「1階の2部屋だけペット可」にしました。

1階なら

足音が下の部屋に響かない

一部だけで

建物の全部をペット可にしなくても、試せる

2階の入居者に

今の入居者への影響が少ない

あわせて、今の入居者全員にお知らせの紙を配り、気になることがあれば連絡してほしいと伝えました。ペット可の条件は、募集の不動産会社に伝え、物件サイトに「小型犬・猫1匹まで」と書いてもらいました。

募集の流れは入居者募集の流れと広告料で説明しています。

よくあるご質問

Q. ペット可にすると、家賃は上げられますか?

上乗せしている物件はあります。ただ、いくらなら決まるかは、近くのペット可の部屋の家賃と比べて決めてください。家賃の決め方は家賃の決め方|相場の調べ方で説明しています。

Q. ペット不可の部屋で、入居者が隠れて飼っていました。

契約違反にあたります。まずは事実を確かめ、書面で改めるようお願いします。すぐに解約を求める前に、話し合いでどう進めるか、弁護士の先生に相談してください。

Q. 一度ペット可にしたら、元に戻せませんか?

次に募集する部屋から条件を変えることはできます。今住んでいる人の承諾を取り消すのは難しいと考えてください。だからこそ、最初は一部の部屋で試すのがおすすめです。

Q. 退去のとき、ペットの毛やにおいの費用はいくらを見込めばよいですか?

部屋の広さや飼った年数、動物の種類で変わります。入居のときの写真と、退去のときの立ち会いでの確認が大切です。立ち会いの進め方は退去立ち会いの流れで説明しています。

ペット可は、条件を決めて書面で承諾すれば、空室対策の1つになります。まずは一部の部屋から試し、退去時の費用の決め方まで契約で決めてください。

出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版。第8条、別表第1 五、別表第2 三)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」、環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(平成22年2月。東京都 保健医療局の掲載ページ)、狂犬病予防法 第4条・第5条(e-Gov法令検索)、身体障害者補助犬法 第11条

その他のテーマは不動産コラムにまとめています。

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