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アパートを持つと、法律で決まった点検がいくつかあります。代表的なのは、消火器などの消防設備の点検です。ほかに、受水槽(水をいったんためておくタンク)がある建物は水の検査、大きな建物は建物そのものの定期報告が要ります。ところが、どの点検が自分の物件に当たるかは、建物の広さや設備で変わります。相続でアパートを受け継ぐと、親が何をしていたのかが分からないこともあります。
このページでは、点検ごとに「当たるかどうか」の見分け方を表にし、1年の予定表に落とすところまでを、計算例で示します。ここでは東京都の例を使います。神奈川・埼玉・千葉の方は、地元の消防署で確かめてください。
このページのポイント
- 消防設備の点検は、延べ面積150㎡以上のアパートなど、消防設備が要る建物なら必ず要ります。機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回(屋内消火栓・自動火災報知設備などがある場合。消火器だけなら機器点検のみ)、消防署への報告は共同住宅なら3年に1回です。
- 受水槽の検査(簡易専用水道)は、タンクの有効容量が10立方メートルを超える建物だけです。水道を直結で引いている建物には当たりません。
- 建物の定期報告(建築基準法12条)は、自治体が指定する規模の建物だけです。小さな木造アパートは当たらないことが多いですが、自治体で確かめます。
このページの内容
1. まず「自分の物件の数字」を3つ集める
点検に当たるかどうかは、次の3つの数字でおおよそ決まります。登記事項証明書(建物の登記の写し)や、建てたときの図面で確かめます。
| 集める数字 | どこで見るか | 何の判断に使うか |
|---|---|---|
| 延べ面積(各階の床面積の合計) | 登記事項証明書、確認済証 | 消防設備の種類、点検をだれがするか、建物の定期報告 |
| 階数 | 登記事項証明書 | 消防設備の種類、建物の定期報告 |
| 受水槽の有無と有効容量 | 建物を見て確かめる、図面 | 受水槽の検査に当たるか |
2. 点検ごとの「当たるかどうか」の早見表
| 点検 | 根拠 | 当たる建物(目安) | 頻度 | だれがするか |
|---|---|---|---|---|
| 消防設備の機器点検 | 消防法17条の3の3 | 消防設備がある建物(共同住宅は延べ面積150㎡以上で消火器が要る) | 6か月に1回 | 延べ面積1,000㎡以上で消防署長などが指定したものは有資格者。それ以外は自分で点検してもよい |
| 消防設備の総合点検 | 同上 | 同上 | 1年に1回(屋内消火栓・自動火災報知設備などがある場合。消火器だけなら機器点検のみ) | 同上 |
| 消防署への報告 | 同上 | 同上 | 共同住宅は3年に1回 | 大家さん(建物の関係者) |
| 住宅用火災警報器 | 消防法と各市町村の条例 | 自動火災報知設備のない住まい | 作動の確認をこまめに。交換は10年が目安 | 大家さん(関係者) |
| 受水槽の清掃と検査(簡易専用水道) | 水道法34条の2 | 有効容量が10立方メートルを超える受水槽 | 清掃は1年以内ごとに1回、検査も1年以内ごとに1回 | 清掃は業者、検査は国の登録を受けた検査機関 |
| 建物・設備の定期報告 | 建築基準法12条 | 自治体(特定行政庁)が指定する建物。東京都では、共同住宅は5階以上かつその用途の床面積が1,000㎡を超えるものなど | 建物は3年ごと、設備・防火設備は毎年 | 建築士など資格者 |
150㎡以上
消火器が要る(消防法施行令10条)
500㎡以上
自動火災報知設備(建物全体のベル)が要る(同21条)
※150㎡未満の小さなアパートでも、各部屋の住宅用火災警報器は要ります。2階建てで8戸ほどの木造アパートは、消火器だけ、という建物が多くなります。くわしい基準は、地元の消防署で確かめてください。
報告や検査をしないと、罰金の対象です
- 消防設備の報告をしない:30万円以下の罰金または拘留(消防法44条)
- 受水槽の検査を受けない:100万円以下の罰金(水道法54条)
3. 消防設備の点検:自分でしてもよいか
消防法17条の3の3は、政令で決める建物は消防設備士などの有資格者に点検させ、その他の建物は関係者が自分で点検してよい、としています。消防法施行令36条2項では、アパートなどの共同住宅で有資格者が要るのは、延べ面積1,000㎡以上で、消防長または消防署長が指定したものです(店や旅館などが入る建物は、1,000㎡以上なら指定がなくても要ります)。
延べ面積1,000㎡以上で、消防署長などが指定
有資格者が点検
消防設備士など
それ以外の建物
自分で点検してもよい
ただし、東京消防庁は有資格者による点検を勧めています。
自分でするか、業者に頼むかは、次の表で決めます。
| 自分でする | 業者に頼む | |
|---|---|---|
| 向いている建物 | 消火器だけの建物 | 自動火災報知設備などがある建物 |
| 手間 | 点検票の書き方を覚える。報告書を消防署に出す | 立ち会うだけ。報告書も出してくれることが多い |
| 気を付ける点 | 消火器の使用期限、圧力計、置き場所を見落とさない | 見積もりで、点検の回数と報告の代行が含まれるかを確かめる |
業者に頼む点検の費用は、管理会社に払う管理料に含まれず、別料金になっていることが多くあります。国の調査では、消防設備などの点検を管理料に含める会社より、別料金にする会社のほうが多くなっています。何が管理料に含まれるかは管理委託料の相場と、含まれる仕事で整理しています。
報告の書類と出し方
東京消防庁のページに「消防用設備等点検結果報告書」「消火器具点検票」などの様式と記入例があります。出し方は、電子申請、窓口、郵送のどれかです。
4. 受水槽:まず「あるかどうか」を見る
アパートの水道には、大きく2つの引き方があります。
| 引き方 | 見分け方 | 検査 |
|---|---|---|
| 直結給水 | 敷地に大きなタンクがない。水道メーターから各部屋に直接 | 水道法の簡易専用水道の検査は当たらない |
| 受水槽式 | 敷地の地面や屋上にタンクがある。ポンプがある | 有効容量が10立方メートルを超えれば簡易専用水道。清掃と検査が年1回 |
10立方メートル以下の小さなタンクでも
簡易専用水道には当たりません。ただ、水をためる以上、清掃と点検は欠かせません。自治体によっては、小さなタンクにも管理の決まりや指導があります。物件のある市区町村の保健所で確かめてください。
簡易専用水道の設置者がすることは、次のとおりです。
- 清掃
- タンクの点検
- 水の色・にごり・におい・味の確認など
- 点検や検査の記録を5年残す(大田区の案内)
5. ケーススタディ:Aさんが作った「1年の点検予定表」
※説明のための仮の例です。
Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。父の書類を探すと、消防設備の点検の報告書の控えが見つかりました。ただ、最後の報告がいつだったかは、はっきりしません。
① 自分の物件の数字を集める
| 項目 | Aさんの物件 |
|---|---|
| 構造・階数 | 木造2階建て |
| 延べ面積 | 約230㎡(1戸約25㎡×8戸+廊下・階段) |
| 消防設備 | 消火器、各部屋の住宅用火災警報器 |
| 受水槽 | なし(直結給水) |
② 当たる点検を決める
| 点検 | 当たるか | 理由 |
|---|---|---|
| 消防設備の点検・報告 | 当たる | 延べ面積150㎡以上で消火器がある |
| 有資格者が必要か | 必要ではない | 延べ面積1,000㎡未満 |
| 受水槽の検査 | 当たらない | 直結給水 |
| 建物の定期報告 | 当たらない見込み | 2階建て・1,000㎡未満。市に確かめる |
Aさんは、消防署に電話し、最後の報告がいつだったかを確かめました。報告が3年以上前だったので、すぐに点検と報告をすることにしました。
③ 1年の予定表に落とす
4月
消防設備の機器点検(消火器の外観・圧力・使用期限、置き場所)
5月
雨の前の見回り(アパートの大規模修繕|自分でできる点検)
10月
消防設備の機器点検(2回目)。住宅用火災警報器の作動確認を各部屋にお願いする
10月(3年ごと)
消防署へ報告(前回の報告から3年目の年)
毎月
共用廊下の消火器の置き場所に物がないかを見る
Aさんは、点検を業者に頼む場合と、自分でする場合を比べました。消火器だけの建物なので、最初の1回は業者に頼んで立ち会い、点検のやり方を見て覚えることにしました。2回目以降を自分でするかは、そのとき決めます。
④ 住宅用火災警報器の交換時期を確かめる
10年
交換の目安(総務省消防庁)
18年
Aさんの警報器(2008年の建築のときに付けたもの)
そこで、8戸分をまとめて交換することにしました。入居者には、工事の日を書面で知らせ、立ち会いをお願いします。
※費用は業者や機種で変わるので、見積もりを2社から取ります。
6. 相続したら、まず確かめる4つ

| 確かめること | どこで |
|---|---|
| 消防設備の報告を最後にした日 | 物件のある地域の消防署 |
| 点検を頼んでいた業者と、契約の中身 | 親の書類、通帳の引き落とし |
| 受水槽の清掃と検査の記録 | 親の書類、保健所 |
| 建物の定期報告の対象かどうか | 市区町村(または都道府県)の建築の窓口 |
持ち主が代わったら、報告の名前も代わります
点検の報告者は、建物の「関係者」(所有者・管理者・占有者)です。相続で持ち主が代わったら、次の報告からは新しい持ち主の名前で出します。点検を業者に任せていた場合は、請求先や連絡先を新しい持ち主に変える連絡も忘れずにします。
点検を自分でするか管理会社に任せるかは、自主管理と管理委託の違いで比べ方を説明しています。点検と報告の控えを、契約書や修繕の記録と一緒に1冊にとじておく方法は、貸している家を子に引き継ぐ前にをご覧ください。
よくあるご質問
Q. 管理会社に任せていれば、点検は気にしなくてよいですか?
管理委託の契約に「消防設備の点検と報告」が入っているかを確かめてください。入っていなければ、別に頼むか自分でする必要があります。報告の義務は、最後は建物の関係者にあります。
Q. 消火器の使用期限が切れていました。
交換してください。古い消火器は、容器が傷んで破裂するおそれもあります。捨てるときは、消火器のリサイクルの窓口を使います。
Q. 入居者が住宅用火災警報器を外していました。
付け直してもらうよう、書面でお願いします。音がうるさくて外す例もあるので、電池切れの合図ではないかを確かめます。電池の交換や本体の取り替えの費用の分担は、契約書を確かめてください。
Q. 神奈川・埼玉・千葉の物件も、同じ決まりですか?
消防法や水道法は全国共通ですが、細かな扱いや報告の出し方は消防署や自治体ごとに違います。地元の消防署・保健所・建築の窓口で確かめてください。
アパートの法定点検は、延べ面積、階数、受水槽の有無の3つの数字で、当たるかどうかがおおよそ決まります。消防設備の点検は、延べ面積150㎡以上のアパートなら要り、共同住宅は3年に1回消防署へ報告します。
受水槽の検査と建物の定期報告は、規模によっては当たりません。当たる点検を1年の予定表に落とし、相続したら最後の報告日を消防署で確かめるところから始めましょう。
出典:消防法 第17条の3の3(e-Gov法令検索)/東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」/東京消防庁「消防用設備等点検結果報告書等の様式」/総務省消防庁「消防用設備等の点検基準、点検要領、点検票」(点検の期間は平成16年消防庁告示第9号)/国土交通省 近畿地方整備局「消防用設備等の点検」(PDF)(消火器具は機器点検6か月ごとのみ)/消防法施行令 第10条・第21条・第36条(e-Gov法令検索)/総務省消防庁「住宅用火災警報器を設置しましょう」/水道法 第3条・第34条の2(e-Gov法令検索)/港区「簡易専用水道」/大田区「簡易専用水道の設置者の皆様へ」/建築基準法 第12条(e-Gov法令検索)/東京都都市整備局「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」
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