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親の家を兄弟3人で相続した。誰が不動産会社とやりとりするのか。何を、どうやって全員で決めるのか。
このページでは、名義を決める前に済ませておきたい、代表者と同意の取り方の手順をまとめます。
このページのポイント
- 遺産分割の前の共有なら、売るには相続人全員の同意が要ります。
- 同意は「売るかどうか」だけでなく、値段の下限や時期まで先にそろえます。
- 窓口の代表者を1人決めると、話が早く進みます。
このページの内容
- 1相続人をはっきりさせるだれか1人が戸籍を集める。最初にすること
- 2決めておく項目をそろえる全員で、下の書き込み表を埋める。査定を見た後
- 3代表者を決める全員で、窓口と名義の付け方を決める。売り出す前
- 4意見が割れたら話し合い全員で。だめなら弁護士の先生など第三者に
- 5契約・決済と申告売主全員が書類をそろえる。売った翌年に一人ひとりが申告
1. 手順1 相続人をはっきりさせる
1人でも同意していないと、家全体は売れません
相続人が複数いると、分け方が決まるまで家は全員の共有です(民法898条)。共有の家を売ることは、ほかの共有者の同意が要る行為です(民法251条)。
まず、相続人が誰かをはっきりさせます。亡くなった方の生まれてからの戸籍で確かめます。思っていなかった相続人が見つかることもあるからです。
相続人の範囲は法定相続人とは|相続順位と取り分(初級編)をご覧ください。
2. 手順2 全員で決めておく項目をそろえる
「売る」と全員が言っても、中身がそろっていないと、途中で止まります。次の項目を、先に全員でそろえておきます。
下の表は、決まった項目に印を付けて使う書き込み表です。
| 決めておく項目 | 例 | 決まったら印 |
|---|---|---|
| 売るかどうか | 全員が売ることに同意 | □ |
| 値段の下限 | 「3,000万円を下回るなら、もう一度話し合う」 | □ |
| 売り出す時期 | 「四十九日の後から」「相続税の申告期限までに」 | □ |
| 窓口の代表者 | 長男が不動産会社とやりとりする | □ |
| 名義の付け方 | 全員の名義で売るか、代表者1人の名義にするか | □ |
| 代金の分け方 | 法定相続分のとおりか、別の割合か | □ |
| 契約・決済の日の出方 | 全員が出るか、来られない人は委任状で代理を頼むか | □ |
代表者1人の名義で売るときは、協議書の書き方に注意します
代表者1人の名義で売り、ほかの人に代金を分けるときは、協議書に「売って代金を分けるために、代表者の名義にする」と分ける割合を書きます。書いていないと、代表者が家をもらい、ほかの人にお金をあげた(贈与した)と見られるおそれがあります。税の扱いは、税理士の先生にご確認ください。
決めたことは書いて残します
決めたことは、メールや書面で全員に送り、残しておきます。名義の付け方と代金の分け方は、遺産分割協議書に書くことが多いです。
書き方と、売ったお金の分け方は換価分割とは|相続した家を売って代金を分ける流れと名義の付け方にまとめています。
3. 手順3 窓口になる代表者を決める

代表者には、2つの意味があります。
| やりとりの窓口 | 名義上の代表 | |
|---|---|---|
| 中身 | 不動産会社との連絡や、内見の日程を受け持つ | 家の名義を1人にまとめ、その人が売主になる |
| 決め方 | 相続人どうしで決める | 遺産分割協議書に書き、その人の名義で登記する |
| 値段や契約の条件 | 全員で決める | 協議書に書いた範囲で、代表者が進める |
| 向いている人 | 家の近くに住む人、時間の取りやすい人 | 窓口と同じ人にすることが多い |
窓口を決めても、値段や契約の条件は全員で決めます。名義の書き換えは、司法書士の先生の領域です。
売り出す値段で相続人の意見が割れたときの考え方は、相続した家の売値の決め方で説明しています。
Aさんの例(説明のための仮の例です)
Aさんは、母の家を兄・妹と3人で相続しました。家の近くに住むAさんが、窓口になりました。3人は、上の表の項目をメールでそろえました。値段の下限は、査定を3人で見てから決めました。
申込みが入ると、Aさんがその内容を兄と妹に送り、3人で受けるかを決めました。
4. 手順4 意見が割れたら、まず話し合い
まず
話し合い
「なぜ売りたいか」「なぜ残したいか」を出し合うと、折り合いがつくこともあります。査定を取って、家の値段を全員で見るのも1つの方法です
仲が悪く、もめる場合
第三者に入ってもらう
たとえば弁護士の先生です
反対する人や連絡が取れない人がいるときの手続きは兄弟で相続した家|共有名義のまま売る方法と注意点をご覧ください。
話し合いでまとまらないときの道は、主に次の3つです。
| 道 | どんな手続きか | かかる時間の目安 |
|---|---|---|
| 遺産分割調停(家庭裁判所) | 調停委員が間に入り、分け方を話し合います。申し立てには、亡くなった方1人につき収入印紙1,200円と、連絡用の郵便切手が要ります | 調停と審判を合わせて、平均で約1年(令和4年は12.9か月) |
| 遺産分割審判(家庭裁判所) | 調停がまとまらないと、自動的に審判に移ります。裁判官が、遺産の種類などの事情を見て分け方を決めます | 上の平均は、調停と審判を合わせた数字です |
| 共有物分割の請求(地方裁判所) | 遺産分割が済んで、兄弟の共有名義になった家が対象です。話し合いがつかないと、裁判所が分け方を決め、競売で代金を分ける形になることもあります。遺産を分ける前の家には、原則使えません。相続から10年たつと使える場合があります | 事案によります。調停と同じく、話し合いより時間がかかると考えておきます |
※時間は、最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第10回)」による、遺産分割事件(調停と審判)の平均です。
話し合いを進める順番と、家庭裁判所の調停については、兄弟で実家の分け方がまとまらないときで説明しています。
5. 手順5 契約・決済の日と、売った後の申告

買う人が決まったら、売買の契約をし、その後の決済の日に代金を受け取って家を引き渡します。決済までに、相続登記を済ませておきます。全員の名義で売るときは、相続人全員が売主です。
| そろえるもの | だれの分か | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 実印 | 売主になる人全員 | 契約書や、名義を買う人に移す書類に押します |
| 印鑑証明書 | 売主になる人全員 | 名義を移す登記に使うものは、作られてから3か月以内のものに限られます(不動産登記令16条・18条) |
| 委任状 | 当日来られない人 | 代理を頼むときに使います。中身は、司法書士の先生や不動産会社と前もって決めます |
売った翌年に、一人ひとりが確定申告をします
売って利益が出たときは、売った翌年の2月16日〜3月15日に確定申告をします。申告は、代金を受け取る割合に応じて、相続人一人ひとりがします。代表者1人の名義で売ったときも、協議書で決めた割合で各自が申告します。
代金の分け方が決まる前に売ったときは、注意が要ります。確定申告の期限までに分け方が決まり、全員がその割合で申告するなら、その割合で申告できます。決まっていなければ、法定相続分(法律で決まった割合)で申告します。法定相続分で申告した後に分け方が決まっても、原則として、その申告は直せません。売る前に、代金の分け方を書面で決めておくと安心です。
くわしくは相続した家・土地を売った後の確定申告をご覧ください。
よくあるご質問
Q. 相続人の1人と連絡がとれません。
居場所が分からない人がいると、全員の同意がそろいません。家庭裁判所に、その人の財産を管理する人を選んでもらう方法などがあります。弁護士・司法書士の先生にご相談ください。
Q. 遠くに住んでいる相続人がいます。
窓口を近くの人にすれば、遠くの人は決める場面だけ関わる形にできます。契約も、郵送などで進める方法があります。遠方の実家が空き家に|離れて暮らす人の管理と売却をご覧ください。
Q. 窓口になった人の交通費や手間の分は、どうしますか。
交通費や書類を取る費用などの立て替えは、売った代金から先に精算する、と決めておく方法があります。手間の分を代金の分け方に上乗せするかどうかも含めて、手順2の表に足し、全員で決めます。決めたことは書いて残し、代金の分け方は協議書に書きます。
Q. 相続人に、未成年の人や認知症の人がいます。
未成年の人は、ふつうは親が代わりに話し合いに加わります。ただ、親も相続人のときは利害がぶつかるため、家庭裁判所に「特別代理人」を選んでもらいます(民法826条)。認知症などで判断する力が欠けている人がいると、その人は話し合いや売ることに有効な同意ができません。家庭裁判所に「成年後見人」を選んでもらい、その人が代わりに加わります。どちらも時間がかかるため、早めに司法書士・弁護士の先生にご相談ください。
相続人が複数いるときは、名義を決める前に「誰が窓口か」と「何を全員で決めるか」をそろえると、途中で止まりにくくなります。決めたことは書いて残し、名義と代金の分け方は協議書に書きます。
あわせて読む
この記事は2026年11月時点の法律をもとにしています。名義の書き換えは司法書士の先生に、税は税理士の先生にご確認ください。
出典:民法(e-Gov法令検索)第25条(不在者の財産の管理)・第251条・第258条(共有物分割の裁判)・第258条の2(遺産を分ける前の家の扱いと、相続から10年たった後の特則)・第826条・第898条/裁判所「不在者財産管理人選任」/不動産登記令(e-Gov法令検索)第16条・第18条/裁判所「遺産分割調停」/最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第10回)」家事事件/裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」/裁判所「後見開始」/国税庁 質疑応答事例「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」
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