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相続した実家は、駅から遠い郊外の町にある。不動産会社に聞いたら、「値段がつきにくい」と言われた。そんなときに名前が出てくるのが「空き家バンク」です。
ただ、空き家バンクはどの家にも向くわけではありません。このページでは、仕組みと使い方、向いている家の見分け方、ほかの売り方との比べ方を説明します。
このページのポイント
- 空き家バンクは、市区町村が運営する「空き家の紹介の掲示板」です。登録は無料のことが多いですが、売買の契約は別に結びます。
- 向いているのは、普通の売り出しでは反応が薄い家です(郊外・地方、値段が低い、移住や二拠点暮らしの人が好む家)。
- 駅に近いなど普通に売れる家は、不動産会社の売り出しのほうが早いことが多いです。迷ったら両方の見込みを並べて決めます。
1. 空き家バンクとは
空き家バンクは、市区町村(またはその委託先)が、空き家を「売りたい・貸したい人」と「使いたい人」をつなぐ仕組みです。市区町村のホームページに物件が載り、移住を考える人などが見に来ます。
- 1売りたい・貸したい人物件を登録する
- 2市区町村(委託先)ホームページに載せて紹介する
- 3使いたい人移住を考える人などが見に来る
- 4持ち主と使いたい人値段の交渉と契約
市区町村によっては、地元の不動産会社の団体と協定を結び、契約の手伝い(仲介)を頼めるようにしています。
三鷹市で空き家を相談できる市の窓口と団体は、三鷹市の空き家の相談窓口にまとめています。
国の「全国版空き家・空き地バンク」
国も、各地の空き家バンクの情報をまとめて探せる「全国版空き家・空き地バンク」を用意しています。国土交通省が公募で選んだ民間の事業者が運営し、平成30年4月から本格的に動いています。物件の周りの災害の危険(ハザード情報)なども地図で重ねて見られます。
2. 登録から契約までの流れ
市区町村によって細かい所は違いますが、おおむね次の順番です。
| 順番 | やること | 気をつける点 |
|---|---|---|
| ① 相談 | 物件のある市区町村の担当の窓口に、登録できるか聞く | 空き家バンクを設けていない市区町村もある |
| ② 申し込み | 登録の申込書、物件の書類(登記事項証明書など)を出す | 名義が亡くなった方のままだと受け付けないことが多い |
| ③ 現地の確認 | 担当の人や協定先の不動産会社が家を見に来る | 家財が残っていても登録できるか確かめる |
| ④ 掲載 | 写真・間取り・希望の値段がホームページに載る | 雨漏りなど傷みは正直に書く |
| ⑤ 問い合わせ・見学 | 使いたい人から連絡が来て、見学に案内する | 見学の立ち会いを誰がするか決めておく |
| ⑥ 交渉・契約 | 値段と条件を決め、売買や賃貸の契約を結ぶ | 不動産会社に仲介を頼むと、重要事項の説明と契約書の作成をしてくれる |
②の名義:相続登記は義務です
令和6年4月から、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に名義を変える登記(相続登記)をすることが義務になりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
令和6年4月より前に相続した家も対象で、その場合は令和9年3月31日までが期限です。空き家バンクに出すかどうかに関係なく、名義変更は早めに済ませてください。手続きは司法書士の先生に頼めます。
⑥の契約:仲介を入れる形をおすすめします
当事者どうしで直接契約することもできます。ただその場合、境界、建物の傷み、建て直せる土地か、といった説明を誰もしてくれません。
後で「聞いていない」と言われないためにも、仲介を入れる形をおすすめします。
3. 向いている家・向かない家
| 家の条件 | 空き家バンク | 不動産会社の普通の売り出し |
|---|---|---|
| 駅から歩けて、住宅地として人気がある | 向かない(バンクより早く売れることが多い) | 向いている |
| 郊外・地方で、車がないと暮らしにくい | 向いている | 反応が薄いことがある |
| 値段が数百万円以下と低い | 向いている | 扱いを渋られることがある |
| 庭や畑が付いている、古民家風 | 向いている(移住・二拠点暮らしの人が探している) | 買う人の層が限られる |
| 傷みがひどく、すぐ住めない | 「自分で直したい人」に届くことがある | 買い取りの提案になりやすい |
| 早く現金にしたい | 向かない(いつ決まるか読めない) | 買い取りも含めて相談できる |
まず物件のある市区町村で探す
都市部では、空き家バンクがない、またはあっても載っている物件が少ない市区町村があります。1都3県でも、郊外や山・海に近い町では、空き家バンクを設けている所があります。
まず物件のある市区町村のホームページで「空き家バンク」と探してみてください。見つからなければ、国の「全国版空き家・空き地バンク」で、その町の物件が載っているかも確かめられます。
4. ケーススタディ:郊外の町に実家を持つAさん

説明のための仮の例です。金額も例です。
Aさんは、千葉県の郊外の町にある実家を相続しました。最寄り駅からバスで20分。土地は250㎡、築48年の木造です。
不動産会社に聞いた売れる値段の見込みは、400万円前後でした。Aさんは、3つの道を並べて比べました。
| 道 | 見込みの値段 | 決まるまでの見込み | Aさんの手間 |
|---|---|---|---|
| A 空き家バンクに登録(仲介は協定先の不動産会社) | 350〜400万円 | 半年〜1年以上(読めない) | 見学の立ち会いの調整、問い合わせへの返事 |
| B 不動産会社の普通の売り出し | 350〜400万円 | 3か月〜1年 | 少ない |
| C 不動産会社の買い取り | 200〜250万円 | 1〜2か月 | とても少ない |
AとBは、決まったときの値段は大きく変わりません。違うのは「どんな人に届くか」です。Aさんのような家は、移住を考えて地方の物件を探している人の目に留まりやすい。
そこでAさんは、AとBを同時に進められるか、不動産会社と町の窓口に確かめました。町の空き家バンクは、協定先の不動産会社と媒介契約(売るのを任せる契約)を結んだうえで登録する決まりでした。つまり、同じ会社に頼めば、バンクと普通の売り出しの両方に出せます。
仲介の手数料も確かめた
もとの計算での上限(400万円で売れた場合)
- 200万円×5%+200万円×4%=18万円
- これに消費税で19万8,000円(税込)
令和6年7月からの特例の上限
- 30万円×1.1=33万円(税込)まで
- 媒介契約を結ぶ前に説明を受け、同意することが必要
※33万円は上限です。いくらになるかは、契約前に確かめます。
Aさんは、上限いっぱいの33万円になるのか、いくらになるのかを、契約前に書面で出してもらいました。
Aさんが決めたこと
- 同じ会社に任せ、空き家バンクと普通の売り出しの両方に出す。
- 半年たっても決まらなければ、Cの買い取りも含めて考え直す。
- その間の管理は月1回、自分で通う。
5. 登録する前に確かめること
- 名義:相続登記が済んでいるか。共有の相続人全員が同意しているか。
- 家財:残したまま登録できるか。片付けの補助金がある市区町村もある(片付けは実家じまいの片付けと売却、どちらが先かへ)。
- 補助金:空き家バンクに登録した家の改修や片付けに、補助を出す市区町村がある。条件と時期を窓口で聞く。
- 建物の状態:雨漏りやシロアリの跡は、隠さず載せる(空き家の雨漏り・シロアリへ)。
- 貸すか売るか:空き家バンクは賃貸の募集にも使える。貸す前に直す所は空き家を貸す前に直すところへ。
3,000万円の控除の条件に注意
相続した空き家を売るときの税の特例(3,000万円の控除)は、使える条件が細かく決まっています。「売る前に貸すと使えなくなる」などの点があります。
空き家の3,000万円控除と空き家の3,000万円特別控除が使えない5つの場合で確かめてください。税の判断は税理士の先生に確認してください。
相続税や名義変更も、まとめて相談したい方へ
当社は、税理士・司法書士と組んだ相続の相談窓口まとめる相続を運営しています。士業の手配や日程の調整も、窓口一つで進められます。
よくあるご質問
Q. 空き家バンクに登録するのにお金はかかりますか?
登録自体は無料のことが多いです。ただ、契約で不動産会社に仲介を頼めば、仲介の手数料がかかります。登録の前に、手数料の決め方を聞いておくと安心です。
Q. 東京23区の家でも登録できますか?
空き家バンクを設けていない区もあります。都市部の家は、普通の売り出しで買う人が見つかることが多いので、まず不動産会社に見込みを聞いてみてください。
Q. 登録したら、ほかの不動産会社には頼めませんか?
市区町村によって決まりが違います。協定先の不動産会社との媒介契約が前提の所、ほかの会社での売り出しと一緒にできる所があります。登録の前に窓口で確かめてください。
Q. 貸すこともできますか?
多くの空き家バンクは、売るだけでなく貸す物件も扱っています。貸す場合は、修繕の責任などを決めておく必要があります(空き家を貸す前に直すところ)。
空き家バンクは、普通の売り出しでは届きにくい人に、家の情報を届ける道です。まず物件のある市区町村のホームページで、空き家バンクがあるか、登録の条件は何かを確かめてください。
そのうえで、普通の売り出し・買い取りの見込みと並べて比べると、どの道を選ぶか決めやすくなります。
出典:国土交通省「『全国版空き家・空き地バンク』を高機能化し、4月から本格運用を開始!!」(平成30年4月2日)/国土交通省「『全国版空き家・空き地バンク』の更なる情報の充実化!」(平成31年3月29日)/国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」/国税庁 タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」/新潟地方法務局「相続登記の申請義務化について」
その他のテーマは不動産コラムにまとめています。