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連帯保証人とは、入居者が家賃を払えないときに、代わりに払う約束をした人です。2020年4月の民法改正で、個人の連帯保証人には「極度額」を決めることが必要になりました。極度額とは、「保証人が払うのは、ここまで」という上限の金額です。決めないと、保証の約束そのものが無効になります。
では、極度額はいくらにすればよいのでしょうか。このページでは、国土交通省が公表した調査の数字を使って、決め方を示します。相続した古い契約の保証人をどう扱うかもまとめます。保証会社の仕組みや費用は家賃保証会社とは|大家の利点と費用で説明しています。
このページのポイント
- 個人の連帯保証人には、極度額を書面で決めます。決めないと保証は無効です(民法465条の2)。
- 極度額の目安は、国の調査で「判決で保証人の負担と決まった額は平均で家賃の約13.2か月分」。自分の物件の家賃で金額にして決めます。
- 入居者か保証人が亡くなると、その後に生じる家賃は保証の対象から外れます。保証人から聞かれたら、滞納の状況を知らせる義務があります。
このページの内容
1. 極度額の決まり:民法の3つの条文
| 条文 | 決まり | 大家さんにとっての意味 |
|---|---|---|
| 465条の2 | 個人が、これから毎月生じる家賃などをまとめて保証する契約(根保証)は、極度額(上限の金額)までしか保証しない。極度額を書面で決めないと無効 | 契約書に「○○円」と書く。空欄なら保証人に請求できない |
| 465条の4 | 入居者か保証人が亡くなったとき、保証人の財産に強制執行を申し立てたときなどは、保証する金額が、その時点までに生じた家賃などの分で決まり、その後の分は保証しない | 亡くなった後に生じた家賃は、保証の対象にならない |
| 458条の2 | 入居者に頼まれて保証人になった人から求められたら、大家さんは、滞納の有無や残りの額を、遅れずに知らせる | 聞かれたら、書面かメールで答える |
賃貸の連帯保証は「根保証」に当たります
賃貸の連帯保証は、「これから毎月生じる家賃など」を保証するので、根保証に当たります。だから、2020年4月以降の契約では、極度額が必ず要ります。
2. 極度額はいくらにするか:国の調査の数字
国土交通省は、極度額を決める参考として、2018年3月に「極度額に関する参考資料」を公表しました。この中の2つの数字が、目安になります。
1. 判決で、保証人の負担と決まった額
民間の賃貸住宅で、裁判所が連帯保証人に支払いを命じた判決91件を調べたものです。未払いの家賃のほか、原状回復の費用や損害賠償も含みます。
13.2か月分
平均
12か月分
中央値(真ん中の値)
2か月分
最小
33か月分
最大
※家賃の何か月分か。判決91件。
2. 家賃保証会社が回収できなかった額(家賃4万円〜8万円未満の物件)
家賃保証会社が立て替えたのに、入居者から回収できなかった額を調べたものです。
19.0万円
中央値
28.2万円
平均
346.0万円
最高
裁判を経て強制執行まで終えた例
同じ資料の別の調査では、家賃の滞納から裁判を経て強制執行(裁判所による明け渡し)まで終えた例で、未納の家賃が平均9.7か月分、強制執行の費用が平均50.7万円でした。
数字から読めること
裁判になるほどこじれると、家賃の1年分前後になることが多い、と読めます。一方で、ほとんどの滞納は、そこまで大きくなりません。
3. 極度額の書き方と、決めるときの考え方
標準契約書の解説では、極度額の書き方として、次の例を挙げています。
- 「〇〇円(契約時の月額賃料の〇か月相当分)」
- 「契約時の月額賃料の〇か月分」
- 「〇〇円」
極度額は契約時の額で決まります
どの書き方でも、極度額は契約時の額で決まります。あとで家賃が変わっても、極度額は変わりません。
金額は、高ければよいわけではありません
極度額が大きすぎると、保証人を頼まれた人がためらい、入居の申し込みが減ることがあります。「保証人が払うかもしれない最大の額」として、相手が納得して署名できる金額にすることが大切です。
4. ケーススタディ:Aさんが極度額を決めた手順
※説明のための仮の例です。
Aさんは、木造アパート(1K・8戸・家賃6.5万円)を相続しました。契約書を一覧にしたところ(賃貸借契約書で大家が確かめる条項)、8戸のうち5戸が、2020年4月より前に結んだ「極度額のない連帯保証人」の契約でした。また、空いた部屋の新しい入居者が、保証会社ではなく父親を保証人にしたいと希望しています。
① 新しい契約の極度額を決める
家賃6.5万円で、国の調査の数字を金額にしました。
| 物差し | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 判決の中央値(12か月分) | 65,000円×12 | 780,000円 |
| 判決の平均(13.2か月分) | 65,000円×13.2 | 858,000円 |
| 強制執行まで行った例(未納9.7か月分+費用50.7万円) | 65,000円×9.7+507,000円 | 1,137,500円 |
| 判決の最大(33か月分) | 65,000円×33 | 2,145,000円 |
※棒の長さは、判決の最大(2,145,000円)を100とした割合です。
Aさんは、次のように考えました。
- 112か月分を基本に判決の中央値と平均の間に入る「家賃の12か月分」を基本にする
- 2少し上乗せ原状回復の費用も保証に含まれるので、少し上乗せして「80万円(契約時の月額賃料の約12.3か月分)」とする
- 3説明の時間をとる保証人になる父親に、金額の意味を説明する時間をとる
80万円÷65,000円=約12.3か月分
「強制執行まで行った例」の約114万円には届きませんが、そこまでこじれる前に、早く動くことで差を埋めると決めました。家賃の遅れへの最初の動き方は家賃の入金管理で説明しています。
② 古い契約の5戸をどうするか
2020年4月より前に、賃貸借の契約と保証の契約の両方が結ばれていれば、保証には改正前の民法が使われます。法務省の資料では、改正後に賃貸借の契約を合意で更新しても、保証の契約まで合意で更新したのでなければ、保証には改正前の民法が使われ続けるとしています。つまり、5戸の保証は、すぐに無効になるわけではありません。
ただ、Aさんは次のことに気づきました。
| 確かめたこと | 分かったこと |
|---|---|
| 保証人は今も連絡がつくか | 2戸は保証人の住所が古く、連絡がつくか分からない |
| 保証人の年齢 | 1戸は保証人が80代で、存命か・連絡がつくかを確かめる必要がある |
| 保証の中身が書面で分かるか | 101号室は、契約書の保証人欄に署名がある(改正前は、これで保証は有効)。ただ、何を・いつまで・どこまで保証するかが書かれておらず、保証人が範囲を知らない |
Aさんは、次の更新のときに見直すことにしました
保証人を新しくするか、保証会社に切り替えるかは、入居者と相談して決めます。保証の契約を結び直すと、新しい民法が使われ、極度額が必要になります。進め方は、弁護士の先生に確かめてから決めます。

5. 保証人に「知らせること」と「知らせた方がよいこと」
聞かれたら、必ず知らせること
入居者に頼まれて保証人になった人から求められたら、大家さんは遅れずに、家賃の支払いの状況や滞納の額などを知らせます(民法458条の2)。標準契約書の解説では、書面かメールなど、記録の残る方法が望ましいとしています。
聞かれなくても、知らせた方がよいこと
契約を更新したときは、保証人に知らせるよう努める(標準契約書の解説が勧めています)。
知らせずに更新を続けると、請求が認められないこともありえます
最高裁平成9年11月13日の判決は、契約が更新されても、特別な事情がなければ保証人は更新後の家賃も保証する、としました。
そのうえで標準契約書の解説は、入居者が払わない状態が続いているのに、保証人に知らせずに更新を続けたような場合には、保証人への請求が信義則(お互いに誠実にふるまうという決まり)に反して認められないこともありうる、としています。だから、聞かれなくても知らせるのが望ましいのです。
特約を入れておく方法もあります
契約のときに「滞納が〇か月続いたら、大家は保証人に知らせる」という特約を入れておく方法も、解説に挙げられています。
6. 入居者か保証人が亡くなったら
入居者か保証人が亡くなると、保証する元本が決まります(民法465条の4)。「元本が決まる」とは、保証する金額が、その時点までに生じた家賃などの分で決まり、その後に生じた分は保証しない、という意味です。
入居者が亡くなったら
標準契約書の解説は、たとえば入居者が亡くなった後の家賃は、保証人の責任の範囲に含まれないと考えられる、としています。ただし、具体的な範囲は事案によって違いうる、とも書いています。
保証人が亡くなったら
入居者に新しい保証人を頼むか、保証会社に切り替えるかを相談します。標準契約書の解説では、保証人が亡くなったり破産したりしたら、入居者が新しい保証人を立てるという特約も考えられる、としています。
入居者が亡くなったときの手続きは入居者が亡くなったときの手続きで説明しています。
よくあるご質問
Q. 極度額を書かずに保証人のはんこをもらってしまいました。
2020年4月以降の契約なら、その保証は効力がありません(民法465条の2第2項)。結び直しが要ります。どう進めるかは弁護士の先生に確かめてください。
Q. 保証人と保証会社の両方をつけてもよいですか?
両方を求める物件もあります。ただ、入居者の負担が重くなり、申し込みが減ることもあります。物件の家賃帯と、募集の状況を見て決めてください。保証会社の中身は家賃保証会社とは|大家の利点と費用で説明しています。
Q. 法人が保証人になる場合も、極度額が要りますか?
極度額の決まりは、個人の保証人が対象です(民法465条の2)。保証会社など法人の保証は、その会社との契約の中身で決まります。
Q. 保証人に請求する前に、することはありますか?
まず入居者本人に連絡し、記録を残します。保証人には、滞納の状況を書面で知らせてから、支払いをお願いします。強く迫ったり、職場に何度も電話したりするのは避けてください。
個人の連帯保証人には、極度額を書面で決めます。金額は、国の調査の数字(判決で保証人の負担と決まった額は平均で家賃の約13.2か月分)を、自分の物件の家賃で金額にして決めると、根拠を説明できます。相続した古い契約の保証人は、連絡がつくか、存命かを今のうちに確かめ、次の更新で見直します。保証人には、聞かれたら必ず、聞かれなくてもなるべく、支払いの状況を知らせてください。
出典:民法 第458条の2、第465条の2、第465条の4(e-Gov法令検索)、国土交通省 住宅局「極度額に関する参考資料」(平成30年3月30日)、国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)」、法務省「2020年4月1日から 賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」
最高裁判所 第一小法廷 平成9年11月13日 判決(集民第186号105頁)
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